2013年11月5日(火)
被災地に勇気を届けたい
楽天日本一
選手とファン 思い共有
球団創設9年目にして初の日本一(3日)を果たした東北楽天ゴールデンイーグルス。東北初のプロ野球チームは、選手とファン・被災者が一体となった歩みを通して、球史に大きな1ページを記しました。
(安岡伸通)
星野仙一監督(66)が、お立ち台で声を張り上げて真っ先にこう語りました。
「こんなにうれしいことはない。東北の子どもたち、全国の子どもたち、そして被災者の皆さんに、これだけ勇気を与えてくれた選手を褒めてやってください」
選手の胸には、いつも被災者の存在がありました。
第2、第5戦で決勝打を放ち日本一への立役者となった銀次内野手(25)は、津波で大きな被害を受けた岩手県沿岸部出身。「震災があってから、ずっと東北のことを意識してきた。これで皆さんに元気や勇気が届いたのかなと思う」と目を潤ませました。
そんな選手たちの思いはファンにも伝わっています。
仙台市に住む男性(43)は、震災後、ボランティアで被災地に行き、あまりにも悲惨な光景に心が折れそうになりました。「ともに苦しいことを乗り越えてきたからこそ、応援にも力が入った」
福島県から来た女性(29)は「震災に原発事故と、つらい事ばかり。でも、選手のひたむきな姿に元気をもらった。ありがとう。感謝の言葉しか出てこない」
球団の成り立ちも、ファンの声が背後にありました。
2004年に近鉄とオリックスの合併話をきっかけにプロ野球の再編騒動が起こりました。楽天は「チームをなくすな」というファンの声や選手会によるストライキなどを受けた結果、創設された新球団でした。
スター選手も少なく、チームづくりはゼロからのスタート。なかなか勝てなくても、地元のファンは温かい声援を送り続けてきました。
球団創設当初から応援している男性(60)は「まるで自分の子どものよう。一生懸命プレーしている姿は応援せずにはいられない。本当にうれしい」と感慨もひとしおです。
そして11年。星野仙一新監督の下、さぁこれから! という3月11日に東日本を大地震が襲いました。
「乗り越えましょう。乗り越えた先には、もっと強くなった自分と明るい未来が待っているはずです。絶対に見せましょう、東北の底力を!」。同年4月、本拠地開幕戦で嶋基宏捕手(28)が語り掛けてから2年半。その言葉通りの「底力」で、日本一へと上り詰めました。
嶋選手は「大震災直後から被災者や地元ファンに喜んでもらおうと全員必死だった。時間はかかったけど、リーグ優勝をして、日本一になれて、本当によかった」と、ホッとした様子。
「東北のために」と全力でプレーした選手たち。球場のファンに手を振るユニホームの袖には「がんばろう東北」のワッペンが輝いていました。