2013年11月2日(土)
世界社会主義フォーラム
緒方副委員長が参加
北京
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【北京=小林拓也】第4回世界社会主義フォーラムが10月30、31日に北京市内で開かれました。中国社会科学院世界社会主義研究センターの主催で、17カ国から学者、政党代表ら36人が、中国からは120人の学者が参加。日本共産党からは緒方靖夫副委員長が出席しました。
参加者は、2008年の世界金融危機以降の資本主義の状況や、世界の社会主義の運動の現状―などについて討論しました。
緒方氏は第1日目に、「日本の政治と北東アジアの平和環境」と題して報告(要旨別項)。安倍政権がかかえる日本国民との矛盾、歴史認識問題での世界との矛盾、北東アジアの平和構築の課題、尖閣諸島をめぐる問題の平和的解決などを提起しました。
発言後、司会者が「中日間の争いについては、緒方氏は、両国間の力、武力によらない解決を訴えた。この点は重要だ」と感想を述べました。
フォーラムでは、日本からのもう一人の参加者、大西広・慶応大学教授がアベノミクスの本質と日本国民のたたかいについて報告しました。
閉幕にさいして、主催者を代表して世界社会主義研究センター副主任の王立強氏が、参加者の議論を通じて、今日の世界に生起している諸問題について自由に討論し、互いに他を知り合うという点で大きな意義があったことを確認。フォーラム報告集で、この結果を広く伝え、今後もフォーラム開催を継続すると述べました。
「日本の政治と北東アジアの平和環境」
世界社会主義フォーラム 緒方氏発言(要旨)
参院選後、安倍政権は衆参両院で安定多数を占めている。このもとで危険な道に向かう可能性もあるが、他方、安倍政権と日本国民との矛盾は深く、たたかいいかんで新しい日本の進路を開きうる展望がある。安倍政権はまた、世界との間に歴史認識で矛盾を抱えている。
北東アジア情勢の不安定要因として、北朝鮮の核問題、東シナ海での領土に関わる日本と中国の紛争、米軍再編のもとでの米軍の配備と基地の強化がある。それに加えて、安倍首相の歴史認識がある。このため中国、韓国の指導者と対話ができず、どちら側にも重大な損失となっている。
米国はアジア重視の「リバランス」政策で、米国主導の現在の仕組みの中に、中国の統合を進めつつ、その保険として軍事的な対応も怠らないという立場だ。その米政権にとっても、「安倍首相の歴史修正主義により生まれた北東アジアの政治的危機をどうすれば最も効果的に抑え込めるか」が現実の課題になっているほど、日米同盟間にギャップを生んでいる。歴史認識をめぐる問題の是正は急務となっている。
今、すべての紛争、緊張を政治的、外交的に解決することが大きな課題になっている。
日中関係では、尖閣の領有について、歴史的にも国際法上も、日本の領土であると考える。そのうえで、(1)日中双方が、領土に関わる紛争問題の存在を認め、冷静な外交交渉による解決をはかる(2)日中双方が、現状を変更する物理的対応、軍事的対応を、厳しく自制する(3)日中双方が、この問題を、両国の経済関係、人的・文化的交流に影響をあたえないよう努力する―という3点を提起する。力対力の対応は制御不能な事態を引き起こしかねず、相互不信、対立を拡大させるだけだ。日中は「戦略的互恵関係」に立ち戻ることが求められている。
中国が強大な国家になればなるほど、いっそう世界への責任が大きくなっている。そのさいに最も重要なことは、近隣諸国をはじめ世界の政府、諸国民からの尊敬と信頼を得ることではないか、と考える。中国流にいえば、「覇道」ではなく、「王道」により、広く信頼を得ることではないか。日本には「実るほど、こうべを垂れる稲穂かな」ということわざがある。中国が文字通り「平和発展」の道を進むことを心から希望している。