2013年10月31日(木)
「領空侵犯対処」口実 先制攻撃も
「松前・バーンズ協定」詳細判明
外交文書公開
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日本の領空侵犯に対する米第5空軍と航空自衛隊航空総隊の対処要領を定めた「松前・バーンズ協定」(1959年締結)で、米軍は実際には領空侵犯対処を行わず、自らの「交戦規範」に基づき、旧ソ連を念頭に置いた「敵性国」への先制攻撃や他国領域への侵入まで想定していたことが、外務省が29日に公開した外交文書で明らかになりました。
領空侵犯対処は国際法上、警察権の行使とされていますが、他国侵攻などはこれを大きく踏み超えます。
文書は、同省日米安保条約課が作成した極秘メモ「松前・バーンズ協定の取扱いについて」(71年2月3日付)です。メモは、「従来、国会答弁等で米軍の行なう領空侵犯対処措置も、概ねわが方のそれ(警察行動)と同義であると云っているが、実状は根本的に違いがある」と指摘。米軍の「交戦規範」は「領空侵犯対処という特別の方法は認めておらず、一般に『交戦』という概念ですべての戦闘行動を律している」と説明しています。
具体的には、(1)「敵性機」(ソ連機)と遭遇した場合、相手が上空に位置するなど「敵性行動」を取る場合、「これに攻撃(先制攻撃を含む)を加え、撃墜する義務」がある(2)場合によっては「相手方領域内に入ってもよい」―としています。
また、同メモに添付された防衛庁(当時)のメモは、「在日米空軍は65年7月以降、領空侵犯に備えた警戒待機をとりやめている」として、松前・バーンズ協定の「廃止」を要求。外務省もこの点は認めたものの、「米側を通じて極東情勢を得る」ためなどとして廃止を拒みました。
同協定は現時点でも廃止されていません。
松前・バーンズ協定 戦後、日本の領空侵犯は米軍が全面的に対処していましたが、60年1月までに米軍のレーダーサイトを自衛隊に全面移管し、日本が第一義的に対処することになりました。これに伴い、日本の領空侵犯に対する指揮系統や指揮中枢などについて定めた協定。全文は公開されておらず、国会で「秘密協定」だと追及されました。