2013年10月28日(月)
秘密保護法案 「報道の自由」は偽り
直接取材は“犯罪”扱い!?
元陸自情報保全隊長が証言
安倍内閣が閣議決定した秘密保護法案では、「報道または取材の自由に十分に配慮」と書かれ、あたかも取材活動が処罰されないかのように宣伝しています。ところが、防衛省や自衛隊がいう「取材」とは、何を指すかをみていくと、「報道または取材の自由」とほど遠いことがわかりました。
「広報通す」が前提
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「取材は広報を通じてされるものであると認識をしています」―。
こう証言したのは、イラク派兵反対やさまざまな国民の活動を監視してきた元陸上自衛隊情報保全隊長だった鈴木健氏(65)。仙台高裁で行われている保全隊による国民監視差し止め訴訟控訴審の7月1日の法廷での証言です。
日本共産党が2007年に公表した情報保全隊の記録には、一般紙記者の行動も収集され、載っていました。
マスコミ記者がどんな取材をすると、保全隊の監視ターゲットとなる「自衛隊員への外部からの働きかけ」とされるのか、証人尋問で鈴木氏は説明を求められました。
元隊長 隊員に報道の方が、広報を通さずに、そういう(取材をする)ことはないと認識しております。
原告側弁護士 (広報を)通さない取材は問題ある取材だと考えているのですか?
元隊長 いや、それは取材ではありません。
裁判長 官庁の前で、そこの職員と思われる人にマイクを突き付けて聞く場面がテレビでありますが、そういう場合はいかが?
元隊長 場合によっては(監視対象に)取り上げることがあるかもしれません。
広報を通じた取材では、防衛省が“チェック”した都合のいい情報しか出てこないのが当然です。
秘密保護法では、市民が情報開示を求めたり記者が取材することが「特定取得行為」として“犯罪”扱いされます。情報保全隊は、この運用を担う部隊です。現に、自らが設けた基準をもとに憲法違反の監視活動を行っています。
元隊長の証言が、多くのマスコミが行っている関係者への個別の取材について、“取材”とみなさず、場合によっては監視対象になることを認めたもので重大です。
秘密保護法では、こうした取材手法自体が犯罪として処罰される恐れがあります。これでは、報道機関が萎縮し、政府広報を垂れ流す宣伝機関になりかねません。
情報保全隊 主な任務を防衛秘密の保護と漏えい防止とされる防衛大臣直轄の情報部隊。2007年に日本共産党の志位和夫委員長が陸上自衛隊東北方面情報保全隊と情報保全隊本部が、社会保障や春闘など、国民のあらゆる運動を監視している実態を告発しました。12年3月、仙台地方裁判所が、「人格権を侵害した」として、5人への賠償を国に命じる判決を出しています。陸海空の3自衛隊にあった情報保全隊は09年、「自衛隊情報保全隊」に統合しました。