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2013年10月26日(土)

参院予算委 小池副委員長の基本的質疑

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 日本共産党の小池晃副委員長が24日の参院予算委員会で行った基本的質疑は次の通りです。


消費税 4月増税中止こそ景気対策

小池 景気回復の実感ない、なぜか

首相 賃金が下がっている

写真

(写真)質問する小池晃副委員長=24日、参院予算委

 小池晃副委員長 首相は、消費税増税の決定に当たって、景気は順調に上向いてきているというふうにおっしゃいました。しかし、国民にそんな実感はあるだろうか。時事通信社の10月の世論調査では、景気回復を実感するかという質問に、実感すると答えた人は18・5%、実感しないが76・4%で、これは半年前より増えています。半年前は68・6%でした。そこで、総理、景気回復を実感しない人が増えている理由、どうお考えですか。

 安倍晋三首相 この景気については、例えば成長率は上がってきた。設備投資も出てくる。消費はある意味では順調でございます。しかし、まだまだその景気の波は地方、全国津々浦々までに行っているとは言えない状況でありますが、そういう状況の中において、消費税を上げていく、腰折れをさせないという対策のプランをまとめました。同時に低所得者の対策もしっかりとその中には入っていまして、今回そういう判断をしたところでございます。

 小池 そういう実態を壊してしまうのが消費税増税、さらに悪くしてしまうんではないかと思うわけです。

年収は15年で70万円減少、増税は大打撃

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 今いろんな経済指標をおっしゃいましたけれども、おっしゃらなかったのが賃金ですね。長期にわたって賃金は減り続けている(パネル1)。中身を見ますと、90年から97年までは賃金が増えているわけです。大体50万円増えましたね。ところが、その97年に消費税の増税をやって以来、景気が冷え込み、それ以降、15年間で働く人の年収は70万円減っているわけであります。

 ここで5%から8%に増税したら一体どうなるか。暮らしに深刻な打撃を与えて、景気にも大変な悪影響を及ぼすのではないかと思いますが、総理、いかがですか。

 甘利明経済再生担当相 景気の回復には、それを可とするような条件の整備と、それから時間軸が当然必要であります。私どもはその環境の整備をいたしました。

 小池 全く答えていないんですよ。賃金が下がっているのに消費税増税したらどうなるんですかと聞いている。答えてください、総理。

 首相 われわれも、97年、3%(の消費税率を5%に)上げた。その後、アジアの通貨危機等がございました。日本はデフレに陥って経済は低迷をしていくという状況の中において、15年間続いてきた。そこで、私たちは、まずは賃金が下がり続けた、デフレが進んでいく中において賃金は物価以上に下がってきたという大きな問題があります。その中において、企業が大きく収益を改善させました。

 しかし、賃金上昇にはつながらなかったということも反省・検証をしながら、実際に企業が収益を上げてから賃金にそれが跳ね返ってくるまでは少しタイムラグ(時間差)が確かにあるんですが、なるべくそれを縮めていくためにさまざまなこれは機動的な財政出動もしておりますし、経営者の皆さんへの働きかけを行いながら、マインドがチェンジされることによって企業が、お金をため込むことよりも、これはしっかりと投資をしていく。あるいは人材を確保していく。先手を打った方がこれは企業にとって生産性、将来の生産性につながっていくわけでございますから、そういう状況をいま私たちはつくりつつあると。これが大きな変化と言えると思います。

 小池 いろいろおっしゃいましたけど、結局やっぱり賃金は下がっているということは認めざるを得ないし、賃金の上昇に結び付いていないという現実はお認めになるわけですよ。そういうときに消費税の増税やったらどうなるかということを言っているわけであります。財政のためだというふうにおっしゃいますが、果たしてよくなるんでしょうか。

 といいますのは、97年の消費税の増税の際、これは結局、景気が悪化したために、法人税収、所得税収は減りました(パネル2)。それに加えて、景気対策だと言って法人税の減税を繰り返しましたから、増税後3年間を見ますと、消費税の増収分5兆円を超えてそのほかの税収が11兆円減り、トータルで6兆円税収は減ったわけです。今度はこういうことになりませんと言える根拠はありますか。

 麻生太郎財務相 97年のときに下がったというのは事実です。しかし、法人税が下がったのは、制度減税していますから。ですから、結果として11兆のうちの半分の5兆円は制度で下げたということだけ言わないと公平さを欠きますので、言わせていただきたいと存じます。

 それから97年度の場合は、アジアの金融危機が起きて、三洋証券が倒産して、山一(証券)が倒産して、北海道拓殖銀行が倒産、明けてすぐ長銀が倒産して、いわゆる金融危機というものがばたばたばたっと起きたというのが非常に大きな現象だったと思います。

 いずれにしても、消費税を引き上げるということによって、その時期に重なったというのは間違いなく不幸な事実だったとは思いますけれども、今度の場合はそういったことがないようにいろいろ対策をしているとご理解いただければと存じます。

 小池 総理のブレーンである浜田宏一エール大学教授は、この97年の増税の影響は増税だけじゃないんだ、主因じゃないんだという議論について“財務省弁護のための議論だ。それは信用できない。当時の不況は複合汚染だった。増税の影響を認めないのは科学的とは言えない”と言っていますよ。

 しかも、制度減税をこれからやろうとしているじゃないですか。総理は、実効税率の引き下げだって検討しているわけでしょう、主張しているわけでしょう。しかも、97年のときは初めから予定していなかったですよ。あの時は消費税増税で景気が悪くなったから法人税減税したわけでしょう。今度は増税とセットで初めからやろうというわけですから、これだったら97年よりも大変な事態になるのではないかと思うわけですよ。

小池 低所得世帯と高所得者の負担率の差はさらに拡大

首相 簡素な措置をとる

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 小池 あらためて、私は消費税そのものについて問いたいんです。消費税の逆進性です。

 これは、みずほ総研の調査です(パネル3)。年収に対する消費税の負担率で比較をしますと、いまの5%でも、年収300万円未満だと4・1%の負担率です。これが年収1000万円以上だと1・7%。低所得世帯ほど負担が重いわけです、消費税は。なぜかといえば、収入の大半が消費に回るからですよ。これが(税率)8%になればどうなるか。それぞれ6・5%と2・7%。10%になれば8・1%と3・4%。負担率の差はどんどん拡大していくわけですね。

 ただでさえアベノミクスというのは、恩恵を味わっている人はごく一部ですよ。富裕層あるいは輸出大企業だと。一番大変な思いをしている人たちに重いのは消費税ですよ。このアベノミクスの恩恵を味わっているごく一部の富裕層、ここはそのままにして、一番暮らしの大変な人々に消費税の増税をやろうとしているわけですよね。

 総理、日本の貧困と格差をますます拡大させていく、こんな道を進んでいいんですか。

 首相 たしかにこの消費税を引き上げることによって景気の回復を腰折れさせる危険性はあるわけでありますから、だからこそ有識者の皆さんに集まっていただいてご議論をいただいた。そのご議論も踏まえて今回は経済対策パッケージを取りまとめたわけです。

 なぜそもそもわれわれが消費税を引き上げるかといえば、社会保障の安定財源の確保は喫緊の課題であります。その財源としては税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定しているということ、そして勤労世代など特定の者への負担が集中しないことから消費税がふさわしいということになって、昨年、当時の与党の民主党の案に賛成をさせていただいたところでございます。

 消費税は逆進的であるとの指摘もございますが、この消費税の税収は全て社会保障財源化して所得の低い方々を中心に還元をするとともに、引き上げに当たって簡素な給付措置等の所得の低い方々への対応も講じているわけでございます。

給付は1年半に1回1万円、月でワンコイン

 小池 社会保障のためだというけれども、8兆円の消費税増税のうち社会保障充実に回るのは5000億円だというわけですよね。しかも、年金の削減が始まっている。医療費の値上げも計画されている。国民のみなさんは社会保障は良くなっている実感なんて全くないですよ、今のやり方では。

 経済対策をやるから、パッケージだというけれども、8兆円の消費税増税で景気が悪くなる、それを心配して6兆円の景気対策やるというんだったら、来年の4月の増税を中止するのが一番の景気対策になるじゃないですか。

 しかも、今給付というふうにおっしゃった。私は手紙もいただきました。「低所得者対策というけれども、一体どんな生活しているのか知らないんじゃないか」というお手紙です。

 「年に1、2回現金給付を受けても普通の生活であっという間に消える、毎日切り詰め切り詰めだ、焼け石に水です。次の日からは消費税増税されたものを買わなければなりません。助かったという意識はほんの2、3日で、あとはまた物の買えない日々が続く」と。この方は年に1、2回とおっしゃっているけれども、実際には、1年半で1回こっきりでしょう、1年半で1万円。毎月555円ですよ、ワンコインですよ。これでどうして逆進性が解消できるんですか。

 私たちは、消費税は負担が重いから、負担が増えるからただ反対などという単純な議論をしているわけではないんです。応能負担、生計費非課税の税の大原則に反する最も不公平な税制であると。

 だから、これを拡大することは、不正義であると言っているのです。富裕層には軽く、苦しい暮らしをしている人には重くのしかかるこの消費税の増税はやるべきではないと、許されないと申し上げているわけです。

小池 641億円の被災者医療・介護負担減免やめ、9000億円の復興法人税廃止か

 小池 さらに、今回、怒りを呼んでいるのが復興特別法人税の前倒し廃止ですね。同じ復興特別税でも、所得税は25年間、住民税は10年間増税が進むのに、なぜ黒字企業しか支払わない法人税だけ増税を打ち切るのか。これはあまりに理不尽で不公平ではないかと。国民の納得が得られると思いますか。総理、総理にお答えいただきたい。

 経済再生担当相 長期にわたって、あらゆる社会保障なり日本の国体全体を維持していくための強い経済が必要なんですよ。委員は、ほうっておいても日本の企業は日本にとどまって、どんな重税を課しても、利益を上げて納税をするとお考えなんでしょうか。日本経済を支えていく、長期に支えていく強い経済が必要なんですよ。そのためにこれをやっているんです。それから、消費税がいま、日本は5%です。これから上げたらとんでもないことになるとしたら、世界中の国はみんなとんでもないことになっているはずです。

 小池 全く聞いていることに答えていないんですね。重税を課せなんて言っていないですよ。

 この間、日本の大企業は内部留保を270兆円にまで積み上げてきているのが実態でしょう。さんざんこういうことをやっている中で、何で法人税だけ増税をやめるのかと言っているわけです。私の質問に答えていないです。復興特別法人税の廃止に国民の納得を得られますかと。

 首相 この復興特別法人税の廃止については、たしかにいま委員がおっしゃったように、国民みんなで復興のために自ら身を切ろうという絆のあかしであるということは私も重々承知をしています。

 それを承知の上で、今回特別の措置を行うということを決意した理由は、企業はやはり、世界の競争の中で勝ち残っていかなければならないという厳然たる事実があるわけでございます。そこで企業が倒産したら、これは法人だからといって関係ないというわけにはいかなくて、そこで多くの人たちが働いていて、それが生活の基盤になっているのも事実であります。

 ただ、今おっしゃっているように、それが全部内部留保に行ったんではわれわれも意味がないというふうに考えておりますので、大きな変化を与えるべく、まずデフレ経済を脱却して、デフレから物価安定目標2%という目標を立てたわけでございますから、お金を持っている経営者はむしろ能力のない経営者であって、これからどんどん投資をしていく、設備だけではなくて人材にも投資をしていく、正しい判断ができる、先回りしてできる経営者こそ優れた経営者と言われるようになるわけでございます。

 さらには、経営者の皆さんに、早く賃金にこれを還元されて、そして消費が増えて、さらには企業の収益が上がっていくといういい循環に早く入ることが日本全体のためでしょうという共通の認識をつくりながら、多くの方々に賃金に反映させていくことを考えるという心強い反応を得ているところでございます。

減税分を賃上げに回す企業は5%(ロイター調査)

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 小池 そういう正しい判断をしてくださるのであればいいんですが、例えばロイターの調査で、「復興特別法人税を廃止した場合に何に使いますか、そのキャッシュフローはどこに回りますか」という質問への回答をみると、賃上げは5%ですよ、雇用拡大も5%ですよ。そして、最も多かったのは内部留保で30%なんですよ。これが実態なんですね。これで賃上げに回るなんていうことを何の根拠もなく言ってもらっても困ります。

 私、被災地の実態を見てまいりました。所信で総理は、復興は新たな段階に入ったというふうにおっしゃっておりますが、とても十分なものではないですよ。実際回りますと、例えば今年度打ち切られた医療、介護などの一部負担金の減免制度復活を望む声は物すごく強いです。

 岩手県保険医協会のアンケート調査では、岩手県というのは国の援助、支援を打ち切られた後も続けているんですが、これがもし終了したらどうするかと。45・8%の人が通院回数を減らす、または通院できないというふうに言っています。既に免除が打ち切られた社保では43・6%の人が受診を控えております。これが実態です。

住宅再建支援など必要な施策はいくらでもある

 被災者の生の声を聞いてきました。「仮設住宅から出る当てもないのに、なぜ負担だけ増やすのか」「せめて医療や介護の費用だけでも安心して受けられるようにしてほしい」。これが切実な声なんです。

 厚労大臣に聞きますが、私はこれを復活させるべきだと思うんですが、復活のための財源はどれだけあればできるんでしょうか。

 田村憲久厚労相 平成23年度に東日本大震災で被災地になられたところ、この地域に関して、被用者保険の保険料それから自己負担部分、これに関して減免を行った。それに対して、費用援助を全額国がさせていただいたわけであります。これに関しまして、市町村国保、介護保険では合計641億円、被用者保険等を含めた医療保険全体と介護保険では合計約1008億円でございます。

 小池 医療、介護の負担減免は国保、介護に絞れば641億円、社保も含めば1000億円。一方で、何で9000億円の復興特別法人税を打ち切るのかと。これは、復興財源は別に確保するからいいですという問題じゃないんですよ。復興財源のためにもっともっとやるべきことはあるわけです、今実際に。医療、介護だけじゃありません。住宅再建支援金の引き上げあるいは中小企業へのグループ補助の拡充、望んでいることがいっぱいあるときに、なぜこの法人税の増税だけやめてしまうのかと。

 陸前高田の市長は、「復興も進んでいないのに、国がまず復興と名の付くものに手を付けたことが本当に不安になる。政治が見てくれていないと感じることが被災者には一番つらい」と語っておられました。東日本大震災という未曽有の被害から立ち直るために、せめて法人税を払っている黒字の企業は負担能力に応じて負担してくださいと、これが筋であって、「もう終わりでいいです」、そういう話じゃないでしょう。

 むしろ政府は財界に対して、3年と言っていたけれども、復興法人税はもっと続けてほしいぐらいのことを言わなきゃいけない。前倒しでやめるなど言語道断だ、撤回してください。

 首相 復興の予算は安倍政権ができてから19兆円のものを25兆円に6兆円増やしました。これはもちろん減額はいたしません。この特別法人税廃止のために必要な予算は、まさに私どもが進めている経済政策によって増えた自然増収によって増えたお金を投入するわけであります。

 それをほかに使ったらいいではないかと、そういう考え方ももちろんあると思いますよ。しかし、せっかくこのように上振れが出るようになったこの経済、景気を安定的なものにしていくことも大切であります。来年のこの消費税引き上げがここ一番大切なことでありますから、そこにしっかりと投入をしていこうということであります。今年の通常国会におきましても、大門委員、笠井委員から企業に賃上げを働きかけろと言われてわれわれはそのとおりやったわけでありまして、それなりの効果は出たのではないかと思いますが、今回もそういう形で頑張っていきたいと思っているところでございます。

増税中止法案を共同で提出し、政府に中止を迫ろう

 小池 いや、総理の希望的観測はよく分かりますよ、その気持ちは。ただ、気合だけではできないと自民党の宮沢洋一参議院議員も本会議で言っていたじゃないですか。何の保証もないんですよ、今のこのやり方では。しかも、「上振れがある」というなら、その上振れに加えて法人税増税を続けて、「頑張ろう日本」と言っているんだから、みんなで支えましょうと、これがやるべきことじゃないですか。

 今回の消費税増税には一かけらの道理もないと思います。

 私たちは財源のことどうでもいいなんて言っておりません。消費税ではない「別の道」こそ安定した財源になる。富裕層に、そして大企業に応分の負担を求めていく、この道を進むべきだし、国民の所得が増える内需主導の経済改革で税収を増やすということに本気で取り組むことが必要だという提言もしております。しかし、今後の税制の在り方に、もし意見の違いがあったとしても、来年4月に増税することは日本の景気にとって深刻な影響を与えるから反対と、その一点で力を合わせようということも呼びかけて、今、増税中止の法案も準備をしております。

 ぜひ、各党各会派の皆さんにも共同で国会に提出をして増税中止を迫っていくということを求めていきたいと思っています。

雇用 人を使い捨てる社会でいいのか

小池 大企業に「賃上げに内部留保を活用」と発言すべきだ

首相 お願いしたい

法人税減税の間にも賃金は下がり続け、内部留保に回った

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 小池 それから、先ほどから法人税減税を賃上げにつなげるというお話ありました。これは法人企業統計ですから、大企業についての数字であります(パネル4)。これまでも法人税の減税というのは繰り返しているわけですね。その結果、何が起こったか。働く人の賃金は大体50万円減っているわけです、大企業に限った数字ですが。内部留保が130兆円増えているわけです。株主の配当も7兆円増えています。役員報酬は1人当たり200万円、1500万円から1700万円に増えているわけですね。これがこの間の経過なんですよ、歴史の実態なんですよね、総理。

 私たちも「賃上げを」と呼びかけて、それにこたえて政労使会議で賃上げを政府が言ったと。これはよかったと思うんです、率直に。ただ、何でこの会議でもう一歩踏み込んで政府から、賃上げのためにこの内部留保を活用しようと、なぜ言わないんですか。総理、ぜひ言ってください。

 首相 例えば諮問会議においても、この政労使の会議においても、麻生財務大臣から、われわれ政府としてはもうやるべきことをやっているんだから、この内部留保も含めてしっかりと対応してもらいたいという趣旨の発言はなされているわけでございます。ただ企業側もこれはキャッシュで内部留保というものは持っているわけではなくて、これは投資等々に回っているものもあるわけでございますが、その中で私どもとしては、デフレ経済から脱却できるかもしれないと多くの企業に考え始めてもらえる状況にはなったわけでございますから、しっかりと人材に充てていただきたいと思います。

 法人納税企業のほとんどは、しかし中小企業でもございます。経済界から、業種や規模による違いはあるものの、中小企業においても賃金の上昇の動きが広がりつつあるという発言もいただいておりまして、この動きをさらに拡大をしていきたいと思います。

 小池 中小企業が圧倒的というのは企業数の問題で、税額でいえばほぼ大企業、中小企業は半々ぐらいですよ。

 はっきり言ってください。総理が政労使会議に出ておられるんだから、内部留保を活用しろと。麻生大臣はそういう趣旨のことをおっしゃったと言うけれども、総理が、言ってください、政労使会議でそのことを発言するとお答えいただきたい。

 首相 私からもそれはお願いをしようと、このように、今までも内部留保の活用についても私も言及をしたことがございますが、さらに麻生副総理から迫力を持って言及もしておりますし、私からもそういう発言をさせて、これからもお願いをさせていただきたいと思います。

内部留保1%で月1万円の賃上げ

 小池 先ほど内部留保は現金ばかりじゃないというふうにおっしゃいましたけど、私ども、別に内部留保を全部取り崩せなんて言っていないんですね、その一部でもいいと。しかも、この間増えている。内部留保によって資産構成の変化を見ますと、やはり換金可能な資産が増えているわけですよ、現金預金やあるいは有価証券。だから、これを活用しようじゃないかと言っている。これが私どもの提案です。内部留保1%を取り崩すだけで8割の企業で月1万円の賃上げできるじゃないかと、こう提案しているわけですね。非正規社員の時給の引き上げもできるんだと。この場で言うだけじゃなくて、ぜひこれを政労使会議で、米倉(弘昌日本経団連会長)さんに総理が自ら、内部留保を活用して賃上げをするべきだというふうに言っていただきたいと思います。

 政府が直ちにできる賃上げもあるわけです。中小企業への抜本的な支援と併せて最低賃金を時給1000円以上に引き上げる、このことも私ども主張しております。ぜひこれやろうじゃないかと。

小池 非正規雇用の増大が賃下げの原因と認めるか

首相 課題も多い。労働条件の改善を図りたい

 小池 それから、若者をはじめ働く人を過酷な長時間労働やパワーハラスメントで苦しめた揚げ句、モノのように使い捨てにするブラック企業の対策も求めていきたいというふうに思っている。

 私ども、今国会にブラック企業規制法案を提出をいたしました。中身は大きく言って三つの柱です。一つは長時間労働を是正していくこと。年間の総労働時間を労働基準法に法定すること、仕事が終わってから次の仕事まで11時間のインターバルを置くということを決める、サービス残業は残業代2倍にして、いわゆる「倍返し」という形でサービス残業を根絶していく。そして労働条件などの情報公開を、しっかり求人情報なども情報公開していく。離職率なども情報公開をする。そしてパワーハラスメントを規制する。こういう中身です。

 総理、ぜひこれを実現しようじゃないですか。私は、これは党派を超えて、まさに今の日本の、モノのように使い捨てにする働き方をなくす、そういう提案だと思っております。ぜひ、これを実現するために総理にも力を発揮していただきたいというふうに思いますが、いかがですか。

 それから、法改正待たずに取り組めることもいろいろありますから、ぜひやっていこうじゃないかと。どうでしょうか、総理。

 首相 御党が提出をされた法案については国会においてご議論がなされるものと思いますが、政府としては、若者の使い捨てが疑われる企業等は社会的に大きな問題であると考えております。

 このため、本年9月には過重労働重点監督月間の取り組みとして、賃金不払い残業や長時間労働などが疑われる4000件以上の企業等に重点的な監督指導を行うなど、対応策を強化をしております。さらに、若者が適切な職業選択ができるよう企業の魅力発信や就職関連情報の開示なども併せて進めているところでございます。

ブラック企業がはびこる原因は雇用破壊

 小池 ぜひこの法案の中身もご検討いただいて、こういう方向での法改正、共に力を合わせようじゃないかと。これは全ての会派の皆さんに訴えたいと思うんです。

 そこで、何でこういうブラック企業というのははびこってしまうのかという、その背景について議論したいと思うんです。

 背景にあるのは雇用の破壊ですよ。正社員が本当に今減っているという実態があるわけですが、総務省に聞きます。先日、5年に1度の総務省の就業構造基本調査結果が発表されました。非正規雇用は今どのような状況に、増えつつあると思うんですが、実態をお聞かせいただきたいと思います。

 須江雅彦総務省統計局長 平成24年10月実施の就業構造基本調査の結果では、役員を除く雇用者全体に占める非正規職員・従業員の割合は38・2%でございまして、過去20年間、男女共に上昇傾向が続いております。

 同調査におきましては、過去5年間に転職を行った就業者約1050万人においては、前職が正規の職員・従業員であった者約500万人のうち、非正規職員・従業員に異動した者の割合は40・3%、また、前職が非正規職員・従業員であった者約550万人のうち、引き続き非正規職員・従業員となった者の割合は75・8%となっておりまして、いずれも前回調査より数ポイント上昇しております。

 小池 非正規雇用が2000万人を超えて4割に達する、正規から非正規への流れが強まっている、これが実態なんですね。

 そして、それが賃金の低下の原因であることも政府は認めてきました。労働経済白書、この3年間、同趣旨の記述があるわけです。平成23年版、「相対的に賃金水準の低い非正規雇用者の割合が増加することは、労働者の平均賃金を低下させることになると、これが大きな低下要因となってきた」。平成24年版、「非正規雇用者比率の上昇が賃金の減少の最大の要因となってきた」。平成25年版、「現金給与総額の低いパートタイム労働者の比率の上昇が一貫して現金給与総額の減少要因となっている」。繰り返し言っているわけですね。

 総理にお聞きしますが、総理もやはり非正規雇用者の増大というのが賃金を下げる大きな原因になっているという認識をお持ちですか。

 首相 非正規雇用の方々については、能力開発の機会が乏しくセーフティーネットが不十分であるなど課題も多いと思います。

 このため、強い経済を取り戻し雇用の拡大と賃金上昇につなげていくとともに、セーフティーネット機能を強化することにより労働環境の改善を図っていきたいと考えております。

 そして、もちろん、それは非正規の方がこれは増えていけば、それ(非正規)は労働条件は正規の方より悪いわけでありますから、これは、平均すればこれは改善をしなければいけないという状況になっていくんだろうと。

小池 政府がやることは非正規を増やすことばかり

首相 多様なニーズにこたえる

小池 労働者の願いは人間らしい働き方だ

 小池 非正規が増えることが今の賃金、労働条件低下の要因だということをお認めになり、その改善が必要だと言いながら、これから政府がやろうとしていることは正反対じゃありませんか。非正規雇用を増やすようなことばかりを今計画しているわけですね。

 日本再興戦略で雇用の規制緩和のプランを打ち出して、来年の通常国会に次々と法案の提出が準備され、今、労働政策審議会などで検討されているわけであります。その中身は、派遣労働の拡大や有期雇用の拡大で非正規雇用をさらに増やす中身です。あるいは、より解雇しやすくするために限定正社員や解雇の金銭解決の導入。裁量労働制の拡大、残業代ゼロのホワイトカラー・エグゼンプションの導入など、長時間労働、ただ働きの拡大につながるようなものばかりなんですよ。

 総理自ら、非正規が増えれば労働条件は悪化すると、この改善は必要だと今おっしゃった。じゃ、なぜその一方で賃下げの圧力にしかならない非正規雇用の拡大を進めるのか、これでどうやって、先ほどから賃上げするんだとおっしゃるけれども、やろうとしていることは賃下げになるものばかりじゃありませんか。どうなんですか。総理ですよ。

 厚労相 労働者派遣法一つ取りましても、派遣労働者の保護、雇用の安定、処遇の改善も含めて、いま労働政策審議会でご議論をいただき始めたところであります。「限定正社員」というお話もございましたが、これは非正規の方々が正社員になられる中において、多様な働き方の一つの形態としてこういうご提案をいただいておるわけでありまして、これをもって非正規を増やそうというようなことを考えているわけではありません。

10年働いても正社員になれないとは

 小池 あのね、厚生労働大臣がこれじゃ駄目ですよ。きちっと労働者を守るという立場で仕事してくんなきゃ何のための厚生労働大臣なんだ。

 非正規雇用の待遇改善というのは必要ですよ、当然。それはやるべきです。しかし、そのためにも非正規から正規へという施策が必要なんです。ところが、それが全くないわけですよ。

 結局、今検討しているような中身でいえば、派遣労働も永遠に続けられるような中身を考えられているわけで、あるいは有期雇用も5年を10年に延長だと。10年働いても正社員にならないような社会でいいんですか。そして、一生派遣労働で終わるような社会でいいんですか。この間、規制緩和やってきたことによって非正規雇用の労働者がどんどん増えてきた。その歴史的事実をはっきり見なきゃだめですよ。

 それから、「多様な働き方の実現」と言うけれども、現場の実態とは全く違います。厚労省の派遣労働者の実態調査では、派遣を選んだ人の理由、男性の49・5%、ほぼ半分は、正社員として働きたいけれども職が見つからなかったというんです。

 結局、今のやり方をすれば正規になれるなんていう道はないです。しかも、非正規のままいつ首切られるか分からないような状態がさらに長くなっていくというような規制緩和ですよ。

 総理、答えていただきたい。いつでも雇い止めされるような不安定さに加えて、賃金格差も、福利厚生の面でも格差は大きいわけです。これを解決することを本気でやらなければいけないでしょうと。賃上げ政策は「気合」だけ。そして、賃下げ政策は非正規雇用拡大のメニューが満載だ。これでどうして労働者の労働条件はよくなるんですか、賃上げが実現できるんですか。お答えいただきたい。

 首相 まずは、この非正規の方の中から正規に移りたいと、正社員になりたいという方々がその道がちゃんと開かれていると、そしてそのためのキャリアアップ、能力開発ができるようにしていくということが大切でありまして、そのためのさまざまな支援を行っているわけであります。企業側にもそういう対応を取るように促しているところでございます。

 同時に、私たちが今行っている雇用弾力化は、そのことによって雇用が拡大をしていくように、そして働き方の形態がさまざま多様化している中において、そういう多様化しているこのニーズにこたえていくためでもあるわけでありまして、決して非正規労働者を増やしていくことではないわけであります。

働く人を「鮮度が落ちた」と

 小池 全く今やろうとしていることの中身が分かっていらっしゃらないようです。

 派遣労働は上限規制を撤廃して、今までの専門26業務も大変問題あったけれども、その部分だけだったのを、全ての業種にわたってこれは上限規制を撤廃して、いつまでも派遣労働で働けるようにしようという改悪ですよ。

 有期雇用だって、5年で正社員といいながら、これも5年を目前にして首を切られるような実態があるわけだけれども、これをさらに広げると。これでどうして正社員が増えるんですか。こんな規制緩和をやったら、非正規がどんどん広がるだけじゃないですか。

 非正規雇用の労働者が一体どんな状況に置かれているでしょうか。コーヒーショップの大手シャノアールが全国で展開しているカフェ・ベローチェで働いていた29歳の女性の例をちょっとお話ししたいんです。

 この方からお話を聞きました。「私は時給840円で働くアルバイトでした。2003年にオープニングスタッフとして働き始め、店長とほとんど同じ仕事をする責任者として働きましたが、正社員よりはるかに少ない給与の上、ボーナスも各種手当も出ません。店長がいない時間帯は店の責任者でした。新人教育もクレーム処理もやってきました。正社員の店長が1、2年で次々替わる中で店を支えてきたのは私たちだったのです。ところが、3カ月更新の契約を30回重ねて、足かけ8年、一生懸命働いてきたのを突然『契約更新できなくなった』と言われました。『働き続けたい』と言ったけれども聞き入れられなかったのです」と。

 人事部長はこう言ったそうです。「定期的に従業員が入れ替わって若返った方がいい。会社ではこれを“鮮度”と呼んでいる。従業員が入れ替わらないと店の鮮度が落ちる」。この女性は、人を使い捨てにするだけではなく、女性をモノ扱いし、年齢を重ねた女は必要ないと言われたことは許されないということで首都圏青年ユニオンに加入してたたかっておられます。シャノアールでは約5000名のアルバイトの人が働いているというわけですが、そんな大手企業でこんな無法が起こっているわけですよ。

 人間はモノじゃないでしょう。働く人を「鮮度が落ちた」などと切り捨てるような社会で総理はいいと思いますか。いかがですか。総理、答えてくださいよ。

 厚労相 先般改正をいたしました労働契約法でこの雇い止め法理を法定化いたしておりますので、客観的、合理的な理由がなく社会通念上相当と認められないような雇い止めであるならば、これは無効ということになるわけです。

 総合労働相談コーナーでありますとか、ご相談いただければ対応させていただくということになりますし、場合によっては紛争調整委員会にお声掛けをいただければあっせんもあるわけでございます。

 小池 この方は労働契約法が国会に提出された日に会社側から、5年たったら正社員にしなきゃいけない法律ができるから首ですと言われたんですよ。法律を作ったことが追い込んだんですよ。こういう実態なんです、今の企業は。総理、こういう社会でいいのかということに答えてほしい。

 首相 たしかにわれわれもそういう社会でいいとは思っておりません。ですから、そういうことをする経営者に対応して、(契約を)何回も繰り返していくようであれば、本人は期待しているわけですから、正社員になれるという期待を持っている中において雇い止めをするというのは不当であるということをはっきりとさせながら、そうなっているんだとご存じないアルバイトの方々や非正規の方々もたくさんおられるわけでありますから、これは周知徹底をしていきながらしっかりと相談もできる体制を取っていかなければならないと、このように考えているところでございます。

 小池 労働者の一番の願いは、「多様な働き方」じゃないんです。やっぱりきちんと評価してほしいということなんですよ。人間らしく働きたいということなんですよ。それにこたえなきゃいけない。

小池 労働法制規制緩和は“若者使い捨て宣言”だ

 小池 総理は、衆参本会議で、「若者応援企業宣言事業」を活用すると答弁されましたが、厚労大臣、この「若者応援企業宣言」ができる企業というのはどういう企業、どういう求人を出している企業ですか。

 厚労相 若者応援企業は幾つか条件があるんですけど、正規社員の求人をハローワークの方に提出をいただいておる。その正規社員の概念ですけれども、基本的に、雇用期間の定めがなく、所定労働時間が通常の労働者と同等ということでございまして、派遣でありますとか請負の求人は当てはまらないということであります。

 小池 ちゃんとそういう企業を若者応援企業だというふうに厚労省は言うわけでしょう。正社員の求人が若者応援だと言っているわけでしょう。

 それなのに何で非正規雇用拡大の政策ばかりを打ち出していくのですか。まさに今やろうとしている中身というのは、私は「若者応援宣言」じゃないと思いますよ。正反対の“若者使い捨て宣言”じゃないですか。これを改めることが求められている。

 総理もやはりそういう社会ではいけないというふうにおっしゃった。ぜひそういう方向での労働政策の転換をしていただきたいんですよ。

 総理も参加した9月のG20サミットが採択した宣言は何をうたっているか。「質の高い雇用を通じた成長」を課題に掲げています。そして、「生産的でより質の高い雇用を創出することは、強固で持続可能かつ均衡ある成長、貧困削減及び社会的一体性の向上を目指す各国の政策の核である」と。「求職者に仕事を探す支援をし、少数派及び脆弱(ぜいじゃく)層を労働市場へ参加させ、非正規雇用を減少させるため、効果的な政策をやる」んだと。これを総理も参加してG20サミットでは宣言をしているわけですよ。質の高い雇用こそ安定した成長につながる、人間らしい雇用こそまともな社会になるんだと。これが世界の流れなんですよ。

 ぜひこういう方向での雇用政策の抜本転換を求めて、質問を終わりたいと思います。


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