2013年10月26日(土)
主張
NSC法と秘密法
「一体」が危険浮き彫りにする
安倍晋三政権が、外交・軍事の司令塔にと狙う「国家安全保障会議(日本版NSC)」の設置法案が衆院で審議入りし、週明けからは特別委員会で審議が始まります。安倍政権は、外交や防衛などの情報を「特定秘密」とし漏らした公務員などに重罰を科す「特定秘密保護法案」も閣議決定、審議入りを狙っています。安倍政権はこの二つの法案を「一体」で成立させると繰り返しています。NSC法案も秘密保護法案も日本を「戦争する国」にすることを狙うものですが、その二つを「一体」で成立させようとしているところに危険性が一層浮き彫りになっています。
アメリカの意にそって
安倍首相や与党の自民・公明の幹部は、NSC法案と秘密保護法案を「一体」で成立させる狙いについて、「NSCの機能を発揮させるには、秘密保護法がどうしても必要」(安倍首相)、「NSCができても、日本に情報を教えたら全部漏れるのではどこの国も教えてくれない」(自民党・石破茂幹事長)などと説明します。「いままで情報共有が不十分だった各省庁が、共通ルールで機密の保護と共有化を促進、それをNSCが吸い上げる」といった説明もしています。
「日本版NSC設置法案」は、アメリカの国家安全保障会議(NSC)をまね、首相、官房長官、外務、防衛両相からなる「4大臣会合」を設置、首相官邸に安保担当の補佐官と「国家安全保障局」をおき、平時から有事までの重要な外交・軍事の政策を官邸主導で決定しようというものです。安倍首相が第1次政権以来その設置に執念を燃やしてきたのは、NSCを通じてアメリカと軍事などの情報を共有し、アメリカとの共同行動を強化するためです。もともと日本版NSCの設置を働きかけてきたのはアメリカで、「秘密保護法がなければ情報を教えてもらえない」というのは、アメリカに追随する情けない発言です。
この日本版NSCの活動の支えになると安倍政権が“期待”する「秘密保護法案」は、政府の「行政機関の長」が勝手に指定できる「特定秘密」を漏らした国家公務員などに、最高「10年」もの懲役を科す、これまでない弾圧法です。漏らした公務員だけでなく取材などで働きかけたメディアの記者や一般市民までが取り締まりの対象になる、文字通り、国民の目、耳、口をふさぐ悪法です。
日本版NSCがアメリカから軍事情報を手に入れアメリカとの軍事一体化を強めるために、こうした弾圧法を「一体」で成立させようというのは、日本をアメリカと一緒に海外で「戦争する国」に押しやる文字通り危険な企てです。
悪法阻止のたたかいを
日本国民は戦前、天皇制政府と軍部が「大本営」や「最高戦争指導会議」などをつくって戦争を指導し、「軍機保護法」などの弾圧法規で国民の目と耳、口をふさいだ痛苦の経験があります。戦前の暗黒政治と侵略戦争の誤りをくりかえさせないためにも、NSC法案と秘密保護法案の二つの悪法を阻止することが重要です。
民主主義の根幹である国民の知る権利と言論・表現の自由を保障し、国際紛争は軍事ではなく、外交と話し合いで解決することを掲げた憲法の平和主義を実行することこそ、日本の平和と国民の安全を実現することになります。