2013年10月24日(木)
米無人機攻撃
市民犠牲は“国際法違反”
国際人権団体が共同会見
【ワシントン=島田峰隆】米国がテロ対策を理由に国外で続けている無人機攻撃について、国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルとヒューマン・ライツ・ウオッチは22日、ワシントンで共同記者会見し、パキスタンとイエメンでの調査をまとめた報告書をそれぞれ発表しました。どちらの報告書も、民間人が犠牲となった無人機攻撃は国際法違反だと告発しています。
アムネスティ・インターナショナルは、パキスタン北西部の北ワジリスタン地区で2012年1月から13年8月に行われた45回の無人機攻撃を調査し、うち9件に焦点を当てました。
それによると12年10月には畑で野菜を収穫していた68歳の女性が殺害されたほか、同年7月には夕食を取るために集まっていた労働者18人が攻撃で死亡。無人機攻撃で負傷した人を助けるために現場に駆け付けた人が2度目の攻撃で殺害された例もありました。
パキスタンで調査したムスタファ・カドリ氏は「お年寄りや労働者が米国の差し迫った脅威だとは考えられない。これらの殺害は決して正当化できない」と強調しました。
報告書は、こうした攻撃は「戦争犯罪につながる重大な国際法違反」だと指摘。米国に対し、攻撃実態の調査と公表、法的根拠の提示、犠牲者への補償などを促しました。カドリ氏は、米国が作戦を秘密に進めていることを特に批判。「今こそ米国が攻撃計画を明らかにし、加害者の責任を問う時だ」と述べました。
ヒューマン・ライツ・ウオッチは09年と12年から13年にかけてイエメンで行われた6回の攻撃を調査。82人が犠牲になり、うち少なくとも57人が民間人でした。
イエメン南東部では12年8月に無人機攻撃で5人が殺害されましたが、2人はテロ組織とは無関係の民間人で、テロ組織に暴力を止めるよう説いていた宗教指導者も含まれていました。
報告書は「6件の攻撃中2件は明らかな国際法違反だ。民間人だけを攻撃し、無差別殺りくの武器を使ったからだ」とし、残り4件も違法の可能性が強いとしています。
こうした攻撃は“米国民への脅威が切迫した場合に実施”“民間人を死傷させない”などオバマ米大統領が今年5月に示した無人機攻撃の指針に違反していると強調しています。
同報告書は、米国政府とイエメン政府に対して、国際法に従い民間人の犠牲をなくすよう要求。特に米国に「攻撃の法的根拠を全面的に示すこと」を求めました。