2013年10月22日(火)
異議あり!! 安倍流「改革」
大企業に減税・優遇 国民には8兆円増税
立場超え批判広がる
安倍晋三首相は、15日の所信表明で改めて来年度からの消費税率3%引き上げを明言しました。国民に8兆円の増税を押し付ける一方で、大企業には復興特別法人税を前倒しで廃止したり、設備投資減税を拡大したりといたれりつくせりです。「世界で一番企業が活動しやすい国」を掲げる安倍流「改革」の道理のなさに批判が広がっています。(佐久間亮)
賃金上昇の保障なし
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安倍首相は所信表明で、政府の「経済政策パッケージ」について「賃金の上昇」と「雇用の拡大」が目的だとしました。
しかし、その中身は、首相が「企業収益の増加が、賃金上昇や雇用拡大につながる」と語るように、大企業が栄えれば、いずれ庶民にもおこぼれが落ちてくるというものです。
実際は、法人税は繰り返し減税されてきたものの、賃金は下がり続けてきたのが現実です。1997年から2012年の間に、労働者の平均年間賃金は70万円も減少。反対に、同時期の大企業の内部留保は100兆円も増えています。
復興特別法人税の廃止が賃上げにつながると思うかどうかを尋ねた「日経」14日付の世論調査では、否定的回答が82%を占めています。減税分は企業の手元資金に回るとの見方が多くなっています。
民間シンクタンクの三菱UFJリサーチ&コンサルティングスは4日付のリポートで、「今回の経済対策で得られたメリットを、企業が必要以上に賃上げや雇用増加に使うことは期待できそうにない。14年度の実質可処分所得が大きく落ち込むことは確実」と書いています。
調査でも、地方紙でも
法人税減税が賃上げに回らないとの声は、政府の「景気ウォッチャー調査」(8日発表)にも寄せられています。東北地方のテーマパーク職員は、「法人税が減税になっても企業は借金返済に回すだけ。社員所得への影響は少ない」といいます。
四国地方の商店街代表は、「消費税増税と法人税減税の抱き合わせは中小零細企業には理解できない。法人税減税の恩恵を受けない企業や国民が大半だ」と指摘。近畿地方の一般機械器具製造業の設計担当者も、「法人税は減税となるが低所得者は賃金の増加が見込めない。消費税増税で購買意欲の低下が進む」と語っています。
首相の消費税率引き上げの「決断」(1日)を積極的に評価する全国紙とは対照的に、その後の地方紙の社説では厳しい意見が噴き出しています。
琉球新報は、「次から次に疑問がわく。消費税増税はどうしてもふに落ちない。最たる疑問は消費税を引き上げる一方、法人税を減税する点だ」と指摘。法人税減税で大企業が利益を得る一方、「消費税は逆進性が高く、低所得者の負担が高所得者より重い税である。消費増税で低所得の庶民に重い負担を求める一方、大企業を優遇するのでは、国民の納得が得られるとは思えない」と主張します。
「国民への裏切りであり、首相の責任は大きい」と書いたのは、北海道新聞です。「国民の暮らしは物価高や賃金下落、年金保険料などの負担増に脅かされ、増税で生活基盤さえ破壊されかねない。首相が言う賃上げ策も、確たる保証はない。デフレ脱却も福祉の充実も果たせず、財政再建にもつながらない増税なら認められない」と断じています。
東日本大震災の被災地・仙台に本社を置く河北新報は、「目的も効果も不確かなのは、1年前倒しとなる復興特別法人税の廃止方針だ」「『復興軽視』との批判は免れまい」と批判。岩手日報も、「国民に広く増税する一方で、企業を優遇する。表現を変えれば、家計から吸い上げた税金を企業に付け替えることだ。消費税が持つ逆進性を考えるとき、再配分機能の喪失が際立つ」と指摘しています。
復興法人税の前倒し廃止は、「読売」の7日付世論調査で反対が66%、「朝日」の同日付世論調査でも反対が56%と半数を超えています。