2013年10月16日(水)
ブラック企業規制法案の提案にあたって
2013年10月15日 日本共産党
日本共産党は、若者をはじめ働く人間を、過酷な労働に追い立て、モノのように「使い捨て」「使いつぶす」ブラック企業を国政の大問題として訴えてきましたが、参議院選挙の前進で獲得した議案提案権を活用して、国会にブラック企業規制法案を提出しました。
法案の概要――違法行為へのペナルティー強化と、ブラック企業の実態を社会に知らせる情報公開をすすめる
ブラック企業は、現行法の弱点をかいくぐって、違法行為を隠ぺいしたり、脱法的な手法で過酷な労働を強いています。日本共産党が提案する法案は、こうした「手口」を封じて、ブラック企業の無法を許さないことを目的としています。
法案は、以下にのべる三つの柱で構成され、違法行為へのペナルティーの強化や長時間労働の制限など“規制強化”と、離職率の公表などの情報公開で社会的な批判と抑止力をつくるという、二つの方向でブラック企業を規制します。
同時に、この法案は、違法なサービス残業の根絶やパワハラへの規制など、いわゆるブラック企業にとどまらず、多くの労働者に共通する問題を解決する力にもなります。
(1)長時間労働を是正します。
――管理職を含めた全員の労働時間を正確に記帳した台帳をつくり、本人や本人の同意を得た職場の労働者や家族、友人が労働時間を閲覧できるようにします。みんなで職場の“働かせすぎ、働きすぎ”をチェックして、長時間労働を是正する仕組みをつくります。
――サービス残業には残業代を2倍にする制度をつくります。サービス残業は会社にとって「割に合わない」ものにして抑止力にします。
――年間の総残業時間を360時間に制限します。
――一日の勤務が終わったら次の出勤時間まで最低11時間の“休息時間”を保障します。
(2)離職者数の公表など労働条件や職場環境が求職者(就職活動をおこなう学生・生徒を含む)に正しく情報提供できるようにします。
――企業が採用数と離職者数を公表するようにします。
――就職を希望する会社がブラック企業に該当するかどうかの問い合わせに、ハローワークなどの公的機関が応じるようにします。
――フリーペーパーなどの求職広告で横行している、給料を高額に見せかける誇大宣伝や虚偽記載をやめさせます。
(3)パワーハラスメントをやめさせます。
厚生労働省は、パワハラ行為をおこなった企業に対して、助言、指導、勧告をおこない、勧告に従わない企業名を公表します。
(法案の内容は、別添の「ブラック企業規制法案要綱」をご参照ください)
提案理由――ブラック企業の規制は、若者や労働者、日本社会と経済にとって緊急課題です
日本共産党が、ブラック企業規制法案を提出したのは、大きく二つの理由があります。
第一は、若者を「使い捨て」「使いつぶす」働かせ方を放置することはできないからです。
いわゆるブラック企業では、採用した労働者を過重な労働に駆り立て、次々に離職に追い込むという、大量採用、大量離職・解雇を前提にした経営がおこなわれています。
会社や上司の命令に「絶対服従」させるために、暴行などの身体的攻撃、暴言、侮蔑、脅迫による精神的な攻撃など、パワーハラスメントも横行しています。厚生労働省の見解でも「過大な要求――遂行不可能なことの強制」はパワハラに該当しますが、深夜まで必死で働かないととても達成できない過大な目標や仕事量を押しつけ、長時間・過密労働に駆り立てることも常態化しています。こうした中で、多くの若者が心と身体の健康を壊して退職に追い込まれていきます。
目先の利益や経営者一族に巨額の富をもたらすために、こんな働かせ方を強いることは許されません。どんな企業であれ、そこで働く人たちの生活と権利、人間としての尊厳が踏みにじられているときに、それを是正することは政治の責任です。
第二は、ブラック企業を放置すれば、日本全体の労働条件の悪化をもたらし、日本の企業経営とそこで働くすべての人たちの生活に、大きな被害をもたらすからです。
ブラック企業は、特定の企業とそこで働く人たちの問題だけではありません。放置すれば「普通の会社」は、違法行為や非人間的な働かせ方で低コストを実現するブラック企業に淘汰(とうた)されてしまいます。対抗上“ブラックな働き方”を押しつける企業が増えていくことにもなります。すでに、ブラック企業は、ITなどの新興産業などからはじまり、飲食などのサービス業、衣料品、運送などさまざまな産業や分野の大企業に広がっており、その規制は日本社会と経済にとっても急務です。
非正規拡大の労働法制の規制緩和を許さず、人間らしい雇用を実現するルールを
ブラック企業が成り立つのは、「正社員で募集すれば、いくらでも人は集まる」という労働市場になっているからです。働いている人は「辞めたら正社員での再就職はできない」という恐怖感から、連日、深夜になるまでの長時間労働にも、パワハラやいじめにも耐え、しがみつかざるを得ない状況に追い込まれていきます。
派遣法をはじめとする労働法制の規制緩和で非正規雇用を労働者の4割近くにまで増やしたことが、ブラック企業の存立基盤となっているのです。ところが安倍内閣は、「派遣を常用雇用の代替にしない」という大原則を投げ捨て、正社員を派遣に置き換えることを完全に自由化し、禁止された日雇い派遣も復活させる労働者派遣法の大改悪案を来年の通常国会に提出しようとしています。「解雇自由」の「ブラック特区」もつくろうとしています。こんなことをすれば、非正規雇用がもっと増え、若者が正社員になる道をいっそう狭め、ブラック企業を増やし広げることになってしまいます。
ブラック企業での無法な働かせ方を規制する新しい法律をつくる世論と運動を広げることと一体に、「使い捨て」「使いつぶし」の働かせ方を広げた労働法制の規制緩和の流れを転換させて、人間らしい雇用のルールをつくることは重要な課題となっています。
ブラック企業の「使い捨て」の働かせ方をやめさせるために、ともに力をあわせよう
日本共産党は、国会に提出したブラック企業規制法案の真摯(しんし)な検討と審議をおこなうよう、すべての会派に要請します。あわせて、労働者、労働組合はもとより、経営者のみなさんも含めて国民的な議論で、ブラック企業を規制し、「使い捨て」「使いつぶす」働かせ方をやめさせる法改正が実現するよう、ともに力をあわせることをよびかけます。
同時に、法改正を待たなくても、現行法でも、違法な長時間労働や人間としての尊厳を踏みにじる人権侵害の行為はやめさせることができます。ブラック企業では、違法・脱法行為が当たり前のようにおこなわれています。世論と運動で包囲し、違法行為をやめさせるよう力をあわせることをよびかけます。
ブラック企業の無法から、労働者、若者の生活と健康、権利を守るための共同をすすめようではありませんか。日本共産党は、みなさんとともに力をつくします。