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2013年10月16日(水)

安倍流「富国強兵」の逆行

首相の所信表明演説

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 参院選からおよそ3カ月経た15日、安倍晋三首相の空疎な言葉が国会議事堂に響きました。「この道しかない」で始まった所信表明。復興・原発、国民のくらし、経済、雇用、20分間すべてにわたり、矛盾に満ちあふれた演説でした。

精神論を押し付け

 「福島の若い世代はしっかりと福島の未来を見据えています」。首相は福島出身の若い母親の手紙を紹介し、被災地の復興、福島第1原発の廃炉に「責任を果たす」と約束。しかし、そこには、歴代の自民党政権が悲惨な原発事故をひき起こした責任があるという反省はみじんもなく、当然、原発ゼロへの見通しもありません。

 首相は「若者が活躍し、女性が輝く社会を創り上げること。これこそが私の成長戦略」と誇示しました。しかし臨時国会でねらっているのは、労働者の首を切りやすくし、非正規労働者を5年超えても非正規のままにし、残業代をゼロにする“戦略特区”の導入。多くの若者が苦しみ、社会・政治問題になっている“ブラック企業”を法律で保障する時代逆行の代物です。

 その一方で首相は、「意志さえあれば必ずや道は拓(ひら)ける」と明治人たちの「意志の力」に学び「強い日本」創設を、と説きました。国民の痛みに思いをいたさず、“意志”の力と精神論を押し付け、大企業優遇の施策を並べ、安全保障と外交は米国頼み―安倍流“富国強兵”策の提示です。

 首相は「頑張る人たちの雇用を拡大し収入を増やすこと…そのことがさらに消費を拡大し、新たな投資を生み出す」といいますが、具体的な「戦略」として明示したのは「企業実証特例制度」「集中投資促進期間」など企業の応援策だけです。復興や暮らしのまともな応援策は一つもありません。消費税増税と抱き合わせで、2兆円の公共事業、2兆円の大企業減税など、大企業への大盤振る舞い。“企業栄えれば民も栄える”という安倍流「富国」論です。

「秘密法案」触れず

 「強兵」策はどうか。首相は、日本版NSC(国家安全保障会議)設置を言いながら、国民の批判や懸念が大きい「秘密保護法案」には触れずじまいでした。しかし、「いつでも戦争できる国」にするために、国民の目、耳、口をふさぐ情報統制を狙っていることは公言しています。

 その先に見据えるのは、集団的自衛権行使にむけた解釈改憲です。米国と肩を並べて海外で戦争をする―安倍首相がいう「強い日本」は現代版“強兵”策にほかなりません。

 所信表明を前後して国会では、消費税増税、「秘密保護法案」、憲法改悪に反対する多くの人たちが詰め掛けました。首相の「この道」を阻止する国民の運動がさらに盛り上がる機運が生まれています。

 日本共産党が参院選で躍進して最初の本格的な国会。「自共対決」の論戦がスタートしました。

 (遠藤誠二)


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