2013年10月9日(水)
きょうの潮流
“永遠の妖精”と称され、世界中で愛されたオードリー・ヘプバーンが亡くなってから今年で20年。今冬には未公開の主演映画「マイヤーリング」が全国で記念上映されます▼戦後のハリウッド黄金期に活躍した名女優は、ファッション界にも多大な影響をあたえました。「ローマの休日」などで履いた、かかとの高いサンダルは「ヘップサンダル」と呼ばれ、日本でも大流行。おもに、大阪の生野や東京の足立でつくられました▼単価の安いヘップサンダルの製造は、一家総出の内職として、当時の手近な現金収入になったといいます。しかし、サンダルを接着するゴムのりに有害なベンゼンが含まれていたことから中毒者が相次ぎ、社会問題にもなりました▼そうした危険な労働に携わっていた多くが、在日韓国・朝鮮の人たちでした。くず鉄集めや行商、土木現場のダイナマイト運び…。戦後の荒廃のなかで、差別と貧困のどん底にありながら、たくましく生きてきました▼そんな彼らの姿や時代を切り取ってきた写真が、今月27日まで新宿の高麗博物館で展示されています。カメラマンの故・金裕(キムユ)さんは在日2世。自著で「人を深く知ることは、人を信じ、愛することにもつながっていく」と語っています▼博物館がある新大久保の周辺では、在日コリアンに向けたヘイトスピーチ(憎悪表現)が行われてきました。苦しめてきた人を、さらに追いつめる野蛮さ、異常さ。先の京都地裁の判決は、ヘイトスピーチを「人種差別」と断罪しました。