2013年10月8日(火)
柏崎刈羽原発 フィルター付きベント(排気)でも
敷地境界で数百ミリシーベルト
全身被ばく 専門家「立地は不適格」
原発再稼働がいかに住民に被ばくを押し付けるのか―。東京電力が、再稼働の前提となる新規制基準への適合性審査を申請している柏(かしわ)崎(ざき)刈(かり)羽(わ)原発(新潟県柏崎市、刈羽村)6、7号機で、炉心損傷後にフィルター付きベント(排気)を使用した場合、東電の試算で、敷地境界での全身被ばくが数百ミリシーベルトとなることが分かりました。本紙の問い合わせに答えたもの。専門家は「旧来の立地指針(別項)が適用されていれば立地不適格」と指摘します。7月に施行の新規制基準では、立地指針が適用されておらず住民被ばく軽視が問われます。 (松沼環)
東電は、放出された放射性物質の広がり方の評価が終わっていないため、細かい数字は公表できないとしています。また、どういった事故を想定したのかなどについても、国と自治体と協議のうえ公表したいとしています。
フィルター付きベントは、原発事故の時、原子炉格納容器を破損させないように内部圧力を外に逃がすベントの際に、放出される放射性物質をフィルターで低減させる装置です。
新基準では、炉心損傷後にフィルター付きベントを使用する場合、放出されるセシウム137が100テラ(1テラは1兆)ベクレル以下となるよう求めています。しかし、敷地境界線での被ばく線量を確認することは求めていません。原子炉からはセシウム以外にヨウ素や希ガスなどの放射性核種が放出されますが、それらについての規定もありません。
東電の説明では、柏崎刈羽原発に設置予定のフィルター付きベントでは、希ガスやガス状の有機ヨウ素は除去できないと認めています。
立地指針 原発の立地条件の適否を判断するための指針。重大事故や仮想事故(技術的見地からは起こるとは考えられない事故)が起きた場合も原発敷地境界での全身被ばく量が、250ミリシーベルト以下となることなどを求めていました。最近では、国際放射線防護委員会の勧告などから、100ミリシーベルト以下で運用。原子力規制委員会の田中俊一委員長も昨年11月7日の衆院経済産業委員会で「そこ(=100ミリシーベルト)が基本になる」と答えていました。
住民防護に重大な問題
元原子力安全委員会事務局技術参与の滝谷紘一さんの話 新規制基準は、既存の原発を存続させ再稼働をさせるために、立地指針を適用しなかったのです。100ミリシーベルトを超える被ばく線量となることは、立地指針に違反し、住民を放射線障害から守る上で重大な問題です。東電は詳細を早急に公表するべきです。
また、柏崎刈羽原発は全国の原発の中でも広い敷地を持った原発です。そこでの敷地境界全身被ばく線量の推定が、これまでの立地指針の目安を上回った。東電だけでなく、フィルター付きベントの設置に猶予が与えられている加圧水型を含めて全国の原発のベント時の敷地境界被ばく線量の推定を明らかにするべきです。