2013年10月7日(月)
白井「金」 17歳急成長
世界体操
細身の17歳が、世界の大舞台でくるくると舞い、伸びやかに跳ね回りました。
体操日本代表の白井健三選手(神奈川・岸根高)が5日、初出場となる世界選手権(ベルギー・アントワープ)ゆかで優勝しました。
快挙づくしの初舞台でした。日本人として最年少の金メダルを獲得。持ち技の後方伸身宙返り4回ひねりは、新技「シライ」として認められました。跳馬で繰り出した高難度の技も「シライ・ヒフン・キム」と連名で登録されました。
「こういう大技ができる選手が日本にもいることを示したい」。大会前のインタビューで、本人が口にした心意気です。宣言通りの鮮烈な世界デビュー。大会4連覇をなしとげた内村航平選手(24)は「17歳で大物感がある」と感心しきりです。
この春から夏にかけての一連の経験が、心の器を大きくしました。
3月の大会で左手首を痛め、練習から遠ざかりました。所属先の鶴見ジュニア体操クラブで指導を受ける水口晴雄コーチと、じっくりと語らうゆとりが生まれました。
かねてから感じていた、コーチの指示と自分の感覚とのずれに向き合いました。それまでは、どんなアドバイスも忠実にこなしていました。けがを機に、「できません」、「こうしたいです」と伝えるようになりました。
「『はい、はい』と従うジュニアからの卒業です。おかげで考える体操が身についてきました」
トップ選手からの刺激も、意識を変えました。
7月に代表入りを果たし、内村選手と合宿を重ねました。不得手な種目も手を抜かず、試合形式で全6種目を通し練習する世界王者の姿。目の当たりにして、心を入れ替えました。
代表合宿から戻った白井選手に、水口コーチは目を細めました。
「どんなに調子が悪くても、6種目の練習を試合形式でやりきるようになった。あこがれの選手のすごさを肌で感じたのだろう」
この秋、種目別で群を抜くスペシャリストの地位を、確固たるものにしました。ゆくゆくは内村選手のような、すべてに完璧を追い求める個人総合チャンピオンを思い描きます。
「体操は究めたいのに究められない。そこが魅力です。種目が六つもあって、選択する技も多い。(苦手な)4種目は、ゆっくりと仕上げたい」
あどけない顔立ちの高校2年生の胸に、大志が宿ります。
(勝又秀人)