2013年10月6日(日)
水俣の教訓 条約に生かして
国際シンポ 被害者「悲劇終わらず」
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「公害の原点」とされる水俣病被害で世界的に知られた熊本県水俣市で5日、水俣病の教訓を国際社会に伝えようと「水俣から水銀条約を問う国際シンポジウム」が開かれ、欧米やアフリカなどからも訪れた約160人に、被害者が水俣病の現状を訴えました。
シンポは、水銀汚染防止をめざし水銀条約の採択・署名を行う国連環境計画(UNEP)主催の外交会議に先立ち、「水俣から水銀条約を問う会」が開催。6日までの2日間開かれ、海外の被害実態も報告されます。
生まれながら言語や手足に障害を負った胎児性水俣病被害者の坂本しのぶさん(57)は「水俣病は終わっていません。それをぜひ考えてください」と声を絞り出して訴えました。
「多くの水俣病患者はいまだに放置されたまま」と訴えたのは、水俣病不知火(しらぬい)患者会の大石利生会長(73)。熊本・鹿児島両県にまたがる不知火海沿岸の住民健康調査や環境調査が必要だと強調し、「加害者のチッソ、国、熊本県は恒久的で十分な補償を行うべきだ。水俣病の悲劇を二度と繰り返さないために現状を知ってほしい」と呼びかけました。
水俣病研究者らは、低濃度の水銀汚染による人体への影響などについて報告しました。
条約の外交会議9日から熊本で
水銀条約 健康被害や環境汚染をもたらす水銀の使用や排出を国際的に規制することをめざす条約。2009年2月に国連環境計画(UNEP)が条約制定を決定し、13年1月に案をまとめ、その採択・署名のための外交会議を9〜11日に熊本県内で開きます。約140カ国の代表が参加する予定。条約の名称は、水俣病を教訓にするとして「水俣条約」とされました。条約は、水銀を一定量含む照明器具や体温計といった製品の製造・輸出入について、年限を決めて原則禁止。水銀排出を伴う小規模金採掘の縮減なども盛り込まれています。一方、「順守義務のない自主的な条項が多い」との指摘もあります。大気への水銀排出量は世界全体(2010年度推計値)で約1960トンにのぼり、半分をアジアが占めます。