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2013年10月4日(金)

汚染水 外洋流出

タンクへの移送 「ぎりぎり狙いすぎた」

漏れ防げぬ構造

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 福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)で続発する汚染水漏えい問題―。2日に発生した汚染水タンクからの外洋流出は、傾いたタンクに満水ぎりぎりまで入れようとして注水可能量の見積もりを誤ったり、タンクのフタから水が漏れる構造になっているなど、東京電力の汚染水管理のお粗末さを改めて浮き彫りにしました。


 「ぎりぎりを狙いすぎたのが反省点だと思います」。東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は3日の記者会見で、こう述べました。

 問題のタンクは、直径約9メートル、高さ約8メートルの円柱形。容量は約450トン。傾いた地盤の上に5基が並んで連結されています。水位計は最も高い山側のタンクに設置されており、5基のうち最も低い海側にある今回のタンクの水位を直接測ることはできません。東電は1%以内の傾斜であればタンク設置に支障のないレベルだと説明しています。

 一方、当該タンクはボルトで連結するタイプですが、フタの位置がずれないようボルトで留める構造はあるものの、フタには、ボルトでパッキンを締めて水漏れを防いでいる側板や底板のような水密性はありません。

 2日朝、台風22号による降雨でタンク群周囲の堰(せき)内の水があふれそうになりました。その時点でタンクの水位計では、満水の97・8%まで汚染水が入っていました。東電はタンクの傾きを知っていましたが、満水の98%の水位でも、フタの高さまで一定の余裕があるから大丈夫だと判断。タンクがいっぱいになるぎりぎりまで水を移送することを決定しました。

 同日午前8時37分から午後0時39分の間に2回、計2時間12分間、堰内の水を当該のタンクに毎時12トンで移送。移送量は計26トン強となる計算です。タンク水位は、当初の目安としていた満水の98%という値を超えて、98・6%となりました。

 このときすでにタンクから汚染水が漏れていたはずですが、当該タンクのフタ開口部から点検した作業員は、フタから水面までの距離を3カ所でそれぞれ3、10、13センチメートルと目視で確認。漏えいには気づきませんでした。また、午後4時前から5時にかけてのパトロールでも、漏えいは見つかりませんでした。

 午後8時ごろ、別の作業で現場に通りかかった作業員が、タンクから水が堰外に流出していることを発見。21時ごろ、漏えい水を堰内に導く応急処置を実施しました。

 当該タンクには「淡水化装置」で処理された汚染水が貯蔵されていました。事故発生後早い時期の処理水であるため、比較的高濃度の放射能が入っていると、東電は説明しています。

 もともとは降雨による影響で堰内の比較的放射能濃度の低い水があふれるのを防ごうとした対応ですが、東電の管理体制のずさんさによって、より高濃度の汚染水が海洋流出する最悪の事態を招いたことになります。

解説

東電ずさん管理 再稼働は論外

 東京電力の管理はお粗末すぎます。タンクの周りを囲む堰(せき)内に、降雨によってたまった水を回収する作業中でした。東電は、「ぎりぎりを狙いすぎた」などと、容量の98%近く貯留されていたタンクにさらに、堰内の水を入れようとして、あふれさせました。しかし、五つのタンクは傾いた場所に設置され、水位計はその一番高い位置にあるタンクに1カ所のみ。東電は、その水位計を頼りに「ぎりぎり」を追求し、見誤ったと言いますが、設置場所の傾きを知りながら、事前にまともな検討すらしていなかったということです。

 菅義偉官房長官は3日、今回の汚染水漏れについて「パトロールを1日1回から4回にした。発見が今までより早くできた」と述べていましたが、事実はまったく違います。雨が降っていたこともあってパトロールでは発見できず、別の目的で現場に行った作業員が偶然見つけたものです。「国が前面に出て、必要な対策を実行していく」と宣言しているのなら、現場で起きていることを正確に知るべきです。

 しかも、東電のお粗末な管理で汚染水がまた港湾外に流れ出ました。地元では一時中断していた試験操業を再開したばかり。「汚染水の影響は港湾内の0・3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」と言い続ける安倍首相の無責任さが際立ちます。

 東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は3日の会見で、汚染水漏れなどが続いていることについて「タンクがひっ迫しているなか、やらなければいけないことが多重的に増えている」などと言い訳しました。国会の閉会中審査(9月27日)で東電の広瀬直己社長も「手が回っていないところがある」などと言っていました。

 柏崎刈羽原発の再稼働をするなどは論外です。東電も政府も、人的・物的資源を集中して汚染拡大を防止するために全力を挙げるべきです。(三木利博)


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