2013年10月2日(水)
竹富町に「是正要求」
「つくる会」系 教科書押しつけ
文科省検討
育鵬社版の中学公民教科書を拒否して、東京書籍版の教科書を使用している沖縄県竹富(たけとみ)町教育委員会に対して、文部科学省が地方自治法に基づく「是正要求」を検討していることが1日、明らかになりました。
沖縄県八重山地区(石垣市、竹富町、与那国町)では2012年度から使用する中学校公民教科書をめぐって、採択協議会が十分な議論も合意もなく育鵬社版を答申。これを受けて、石垣市と与那国町は育鵬社版を採択、竹富町は東京書籍版の採択を決めました。
その後に開かれた八重山地区3市町の全教育委員による協議では東京書籍版の採択を決めましたが、文科省はこの協議結果を認めず、育鵬社版を押し付けました。そこで竹富町では町民などからの寄付で東京書籍版を購入し、使用しています。
文科省は竹富町に育鵬社版の使用を繰り返し要求。今年3月には義家弘介政務官が同町を訪れ、「是正」を求めていました。竹富町がこれを拒否し、来年度の使用教科書についても育鵬社版と報告しなかったことから、「是正要求」を出すことを狙っています。
「是正要求」が出されれば、教育行政に関しては初めての事態で、竹富町は「是正」する法的義務を負うことになります。
育鵬社版公民教科書は、「新しい歴史教科書をつくる会」から分裂した「日本教育再生機構」(八木秀次理事長)が主導してつくったもので、子どもたちを改憲に誘導する内容になっています。
解説
侵略美化の露骨な介入
地方自治法による「是正要求」は国が自治体に対して出す最も強い措置です。罰則はありませんが、自治体側は法的義務を負わされることになります。本来、現場の意向が尊重されるべき教科書採択について、法的措置をとってまで育鵬社版を押し付けようとする文部科学省の姿勢は異様で、教育の自由の侵害の最たるものです。
もともと文科省は「地方公共団体が自ら教科書を購入し、生徒に無償供与することまで法令上禁止されていない」(2011年10月26日、衆院文部科学委員会での中川正春文科相=当時=の答弁)としていました。その見解を覆し、竹富町に育鵬社版を露骨に強要するようになったのは、侵略戦争を正当化する「つくる会」系教科書の採択を推進してきた安倍首相が政権についてからです。
文科省による育鵬社版教科書の押し付けは、侵略戦争を美化する「靖国」派を中枢にすえる安倍内閣の立場を示しています。国家権力による危険な教育への介入を許してはなりません。 (高間史人)