2013年10月1日(火)
福島原発汚染水問題 塩川議員の追及
首相発言「完全ブロック」 実態と正反対
衆院経済産業委
東京電力福島第1原発の放射能汚染水問題を審議した衆院経済産業委員会の閉会中審査(9月27、30両日)では、「(汚染水の影響は)完全にブロックされている」(安倍晋三首相)とはいえない実態が改めて示されました。国民の税金が汚染水対策に投入されることになり、東電が責任を負う既存の枠組みは破綻。広瀬直己東電社長、茂木敏充経産相とも、無責任な答弁に終始しました。
「汚染の部分も」
27日の質疑で広瀬社長は、原子炉建屋に流れ込む日量400トンの地下水を放射能汚染水として回収していると説明。別の約400トンの地下水が周辺から海に流出しているが「全部汚れているということではない」と言い訳しました。
日本共産党の塩川鉄也議員の追及に、広瀬社長は「(海に流出する400トンも)汚染されている部分があるかもしれない」と認めました。
専門家は、地下の深い透水層を通じても港湾外に汚染水が流出している可能性を示しています。塩川氏の指摘に広瀬社長は「深いところ(の調査)はこれから」と答え、実態を把握していないことを認めました。
塩川氏は、「汚染水の最大量の想定がないままでは、モグラたたきがずっと続く。これでは抜本的な対策にならない。これが現在進行している問題ではないか」と批判しました。
東電救済枠組み破綻
政府は汚染水処理対策として470億円の税金を投入しようとしています。東電はこれまでに廃炉のための引当金を1兆円確保。さらに「今年度から10年間の総額として1兆円を確保」するとしています。
広瀬社長は「東電に任せておけないという判断だろう」「国の予算でやっていただけるので大変ありがたい」(27日)と述べ、税金投入を当然視しました。茂木経産相は「技術的に困難な分野に限って国が負担する」(30日)と開き直りました。
これに対し塩川氏は、経産省の汚染水処理対策委員会の資料を示し、「技術的に困難性を伴う」といわれる汚染水の貯留や処理、港湾内の海水浄化など6分野についても「国が負担するのか」と追及。茂木氏は「しっかり仕分けしていきたい」と負担する可能性を示唆しました。
加害者である東電は汚染水対策の当事者能力を失い、原子力損害賠償支援機構を通じた東電救済スキームの破綻を明らかにした塩川氏。「東電は破綻処理して、経営、株主、貸し手責任を問い、国が汚染水対策はじめ事故収束と賠償・除染に全面的に責任を果たす体制を構築すべきだ」と迫りました。
再稼働が前提に
27日の質疑で広瀬社長は、今後、積み増す1兆円の追加予算確保にむけた総合事業計画について「今年度、すでに柏崎刈羽が動く計画になっている」と答弁し、原発再稼働が前提だと認めました。
東電は同日、同原発6、7号機の再稼働にむけた安全審査を原子力規制委員会に申請。今でも続く深刻な原発事故への真摯(しんし)な反省なしに再稼働ありきの姿勢です。質疑で政府も「電力の安定供給をあきらめていいということにはならない」(茂木経産相)と容認の構えを示しました。
塩川氏は、再稼働に前のめりの姿勢は福島第1原発の廃炉や汚染水問題解決の「妨げになる」と批判しました。(林信誠、山田英明)