2013年9月29日(日)
IPCC報告書
“温暖化防止はまったなし”
国連総長「行動」訴え
国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は27日、地球温暖化について世界の科学者の知見をとりまとめた第1作業部会の新たな報告書を発表しました。報告は、大気と海洋の温暖化、雪氷の量の減少、海面水位の上昇などをあげて温暖化は「疑う余地がない」と断定し、人間の活動による温室効果ガスの排出がその主要な要因であることをこれまで以上に明確にしました。
世界の首脳たちは2009年に、気温上昇を産業革命前と比べて2度以下に抑えるという目標で合意しています。これを超えると生態系と人間の生存条件にも深刻な影響をおよぼす恐れが生じるためです。
今回の報告は、この目標達成がますます差し迫った課題になっていることを明らかにしました。
今世紀末までの気温上昇は最大4・8度が予測されています。報告で示された四つのシナリオのうち、2度以下の上昇にとどまる可能性が50%以上あると予測しているのは一つしかありません。
気温上昇をめぐっては、08年以来の金融・経済危機を理由に、各国政府が、温室効果ガスの排出削減を後景に追いやってきた状況もあります。
しかし、IPCC第1作業部会の共同議長であるトマス・ストッカー教授が記者会見で指摘したように「(温暖化は)われわれの地球を、われわれの唯一の家庭を脅かしている」のです。
今回の報告は「気候変動の多くの側面は、たとえ温室効果ガスの排出が停止したとしても、何世紀にもわたって持続する」と警告しています。温暖化防止のために効果的な措置を直ちに講じることは、文字通り「待ったなし」の課題です。
「科学者たちは仕事をした。次は政治家の番だ」―6年前のIPCC第4次報告発表にあたってこう発言した潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は今回、次のように強調しました。「温暖化は続く。いま行動しなければならない」。
日本政府は09年、当時の鳩山首相が温室効果ガスを「1990年比で25%削減」すると表明しましたが、安倍政権はこの国際公約を投げ捨て、新たな削減目標さえ決めていません。こうした姿勢は、温暖化問題での国際的な共同に背を向けるものです。(パリ=浅田信幸)
IPCC報告書骨子
○1986〜2005年に比べ、21世紀末の平均気温の上昇幅は0.3〜4.8度
○21世紀末の海面水位の上昇幅は26〜82センチ
○1901〜2010年までの間に海面水位は19センチ上昇
○1880年から2012年までの間の気温上昇は0.85度
○1992〜2005年の間、3000メートルより深いところで水温が上昇している可能性が強い
○気温上昇が人間活動に起因する確率は95%以上