2013年9月25日(水)
きょうの潮流
あのヒトラーのナチ党は、綱領にこんな条文を掲げました。「民族同胞のみが国民たりうる。宗教のいかんにかかわらず、ドイツ的血液を有する者のみが民族同胞たりうる。ゆえにユダヤ人は民族同胞たりえない」▼第1次世界大戦の敗戦や不況の原因をユダヤ人にもとめ、徹底した宣伝で国民を扇動。反ユダヤの感情を植え付けました。そして迫害や追放、隔離政策はホロコースト(大虐殺)へとつながっていきます▼「ガス室に送れ」「朝鮮人は殺せ」。いま、ナチス・ドイツをほうふつさせるようなヘイトスピーチ(憎悪表現)が、日本で行われています。公衆の面前で、ほかの民族を口汚くののしる光景は空恐ろしい▼敵意が向けられた在日韓国・朝鮮人の不安や恐怖はいかばかりか。デモが通るとき、コリアタウンでは「嵐が過ぎ去るのを、じっと待っている」状態だといいます▼その耐え難い時間が一変しました。すべての差別をなくそうと、心ある人たちが立ち上がった「差別撤廃 東京大行進」。明るく訴えた側はもちろん、手を振り、拍手する沿道の雰囲気も温かい。「国境をこえて一緒に歩んでいけるという、新しい可能性を感じた」と、笑顔の韓国人も▼安倍首相の登場とともに、勢いを増すヘイトスピーチ。侵略戦争や植民地支配の歴史をねじ曲げる日本の政治的土壌が、栄養剤になっています。そういえば、ナチスに学べと口にした副総理もいました。こういう勢力をのさばらせないことが、差別のない世界をつくります。