2013年9月24日(火)
JR北海道
レール異常放置 背景に人減らし
北海道七飯(ななえ)町で19日に起きたJR函館線の貨物列車脱線をめぐり、線路幅の異常が多数放置されていたことが発覚した問題で、JR北海道の安全を軽視する体質と事業者まかせの国の責任が改めて浮き彫りになりました。
(北海道・小泉健一郎)
民営化のツケ 安全軽視
同社によると、レールの異常は宗谷線や函館線などの本線で49カ所、駅構内などですれ違ったり一時退避したりする「副本線」で48カ所の合計97カ所見つかりました。異常は、レールの幅が広がったり、左右のレールの高さが基準以上にずれたりしたものです。
同社の野島誠社長は22日の記者会見で、レールの異常が放置された理由を「検査情報の整理と修繕計画の連携ができておらず、補修を先延ばしして失念してしまった」などと述べました。
スピード競争激化
JR北海道は線路などの設備の近代化が進んでいなかったうえに、必要な設備投資を怠って電化が遅れ、整備に手間がかかるディーゼルエンジンの車両が多くなっています。にもかかわらず航空会社とのスピード競争の激化で事故につながりやすい要因が増えています。
これに加えて1987年の分割民営化後の採用抑制が世代の断絶を招き、技術の伝承を阻害しています。そのためJR北海道の社員は40歳代の労働者が極端に少ない、いびつな世代構成になっています。
分割民営化当時1万4千人いた社員は、現在7100人とほぼ半減。その一方で特急列車の運転数は民営化当初の約2倍になりました。
整備や点検、修理のすべてを職員が行っていた国鉄時代と違い、下請け会社にまかせる外注化も進んでいます。
日本共産党の紙智子参院議員は「JR北海道自身の体質改善とともに、国は事業者まかせの鉄道行政をあらため、予算も含めた抜本的な対策を取るべきです」と話しています。
JR北海道 今年の主な事故
発生日時 概要
4月8日 函館線で特急列車がエンジン出火
5月5日 函館線で特急列車が車軸付近出火
7月6日 函館線で特急列車がエンジン出火
7月15日 千歳線で特急列車が配電盤出火
7月22日 根室線で特急列車が潤滑油漏れ
8月17日 函館線でJR貨物の列車が脱線
8月19日 函館線でJR貨物の列車が脱線
9月16日 運転士が操作ミスを隠すため自動列車停止装置(ATS)をハンマーでたたき壊す
9月19日 函館線大沼駅でJR貨物の列車が脱線
9月21日 事故調査でレール幅の広がりが発覚
9月22日 大沼駅事故以外に8カ所でレールの異常が放置されていたことが発覚
9月23日 新たに88カ所(計97カ所)のレール異常放置が発覚
異常が放置されていた本線区間
線名 駅名と区間 異常箇所数
宗谷線 美深―佐久 1
宗谷線 問寒別―豊富 2
宗谷線 豊富―南稚内 4
宗谷線 南稚内―稚内 2
札沼線 石狩太美―新十津川 14
石北線 新旭川―当麻 1
石北線 上越―生田原 10
室蘭線 本輪西―萩野 1
室蘭線 礼文―本輪西 1
根室線 庶路―東釧路 2
根室線 東釧路―姉別 4
函館線 納内―旭川 1
函館線 七飯―森 4
留萌線 深川―増毛 2
合計 49
異常が放置された副本線
線名 駅数 異常箇所数
函館線 14 24
石北線 2 3
室蘭線 10 14
日高線 1 3
千歳線 1 4
計 28 48
※室蘭線と日高線は1駅で重複がある
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