2013年9月22日(日)
きょうの潮流
テレビのインタビューで、初老の男性が戸惑っていました。「人がどんどん減っていく、こんな過疎のところにリニアの駅ができるといわれたって…」▼東京―名古屋間を約40分で結ぶリニア中央新幹線のルートや中間駅が明らかになりました。国鉄時代の基本計画から40年、夢か幻かといわれてきた巨大事業。JR東海は2027年の開業をめざし、来年度から着工する予定です▼全長286キロのうち、9割近くがトンネル。最大深度は40メートルを超し、当初は迂回案も出ていた南アルプスを貫通します。沿線の市民をはじめ、学者や専門家からも自然環境への影響や災害時の対応を懸念する声が上がっています▼大阪までの総建設費は9兆〜10兆円とも。強い磁力で車体を浮かして走るリニアは、消費電力も従来の新幹線の3倍にもなります。財界はホクホク顔ですが、こんな大規模な事業がいまの日本に必要なのか、疑問に思う人は多い▼3・11後のわたしたちは、効率や利便性ばかりを追求し、収益やスピードを競い、エネルギーを大量に消費してきた社会からの見直しをもとめてきました。7年後の東京オリンピック開催を素直に喜べないのも、その計画のなかに大型開発がみえるからです▼いまやるべきことは、何なのか。被災地の復興や、原発事故の対策はもちろん、全国各地で地震や津波に備えることも急務です。原発をなくして、自然や人びとの生活にやさしい安心・安全の社会をつくるために必要なのは、リニアではないでしょう。