2013年9月21日(土)
主張
法人税減税
消費税増税に悪乗りした暴走
安倍晋三政権が来年4月からの消費税増税を強行するために打ち出そうとしている5兆円規模の経済対策に、法人税の引き下げが盛り込まれることが確実になりました。設備投資した分を減税するとか震災復興のための税率上乗せを前倒しして廃止するなどです。法人税減税でもっとも恩恵を受けるのは大企業です。消費税の増税で損害を被る国民や中小零細企業を尻目に、大企業が減税でうるおい、内部留保を増やすというのはまったく筋違いで理不尽です。消費税増税に悪乗りした法人税の減税は、きっぱりやめるべきです。
本末転倒の大盤振る舞い
消費税は、仕入れにかかる税金は販売価格に転嫁し、売り上げに含まれる税金分から仕入れに含まれる税金分を差し引いて納税する仕組みです。最終的には消費者が負担することになるため、一般庶民に大きな打撃を与える一方、力が強く、ほとんど100%価格に転嫁できる大企業はまったく腹が痛みません。逆に中小零細企業は、売り上げが減り、下請け単価などが抑えられたりすると身銭を切らされることになります。
こんな弱いものいじめの消費税を来年4月から増税するために、法人税を負けてやろうなどというのはまったく本末転倒です。もともと大企業は消費税増税でほとんど腹が痛んでいないのですから、減税分はそのままふところを豊かにするだけの大盤振る舞いです。赤字企業は法人税を払っていないので、減税そのものが一部の優良企業だけしか恩恵を与えません。
安倍政権は、企業が設備投資などを増やせば税金を割り引く制度を検討していますが、巨額の設備投資ができるのは大企業だけなので、事実上大企業優遇の減税にしかなりません。賃上げや雇用拡大を条件に法人税を減税するというのも大企業に有利な減税です。賃上げなどはまず政府が企業に強く働きかけて実現すべきです。
財界は政策減税だけでは満足せず、法人税の実効税率(東京都の場合現在35・64%、復興財源として約2%上乗せ)そのものを引き下げるよう迫ってきました。安倍政権がそれを受け入れ、まず来年4月からは震災復興財源として上乗せされている税率を前倒しで廃止し、それに続いて本格的な実効税率引き下げも検討する構えを示しているのは重大です。
東日本大震災の復興はまだ緒についたばかりで完全復興とは程遠いのに、法人税への上乗せだけは廃止しようというのは、文字通り震災復興を二の次、三の次とする言語道断な態度です。15年度以降はさらに大幅に法人税率を引き下げる計画です。消費税増税は国民に押し付けながら大企業の法人税だけは軽減するというのは、財政もかえりみず、大企業の身勝手な要求に屈服する卑屈な態度です。
減税分はためこみになる
安倍政権は、大企業のふところが豊かになれば雇用や賃金も改善し、消費も増える「好循環」が実現すると宣伝しますが、これまで実際に起きているのは逆です。非正規雇用の拡大などで労働者の所得が増えず、消費も増えないため、大企業はふところが豊かになっても内部にためこんでいます。
消費税の増税や大企業減税は中止し、大企業には、ためこんだ利益を賃上げなどで還元させることこそ、経済の立て直しに重要です。