2013年9月19日(木)
著名な医師55人 シリア医療危機で書簡
患者の治療をよびかけ
小児科医で世界保健機関(WHO)元事務局長のブルントラント元ノルウェー首相ら著名な医師55人がこのほど国際医学誌『ランセット』(電子版)で、「シリア紛争が冷戦終結以来世界最悪の人道的危機の一つとなっている」として、同国内の患者を治療しようと呼び掛ける連名の書簡を公表しました。(夏目雅至)
書簡は「医療専門家や施設、患者への故意の攻撃がシリアの医療体制を破壊し、民間人が必要な医療を受けることがほとんど不可能になっている」と指摘。国内の病院の37%が破壊され、20%が重大な被害を受けていると警告しています。
さらに医療従事者469人が現在投獄され、1万5000人以上の医師が国外に脱出。北部アレッポでは紛争前に5000人いた医師がわずか36人となっていると強調しています。
書簡は「シリアの医療体制が破滅する中で、がんや糖尿病、高血圧、心臓病など慢性病で長期的な診療が必要な患者は必要な医療を受ける場所を失っている」と指摘。医療施設や要員に対する攻撃は「受け入れられない」「医療の中立性に対する恥知らずな背信行為だ」と糾弾しています。
書簡にはロシア、中国、ブラジル、米国、英国など世界5大陸21カ国の医師が署名、シリア問題での医師の声明としては前例のないもの。3人のノーベル賞受賞者やシリア現地で活動している医師も署名しています。