2013年9月17日(火)
きょうの潮流
カリブ海に浮かぶ小島キュラソー。オランダ領の歴史を伝える色彩豊かな主都の建物と街並みは、世界遺産になっています。野球が盛んで米大リーグや他国にも選手を輩出しています▼そこで生まれ育ち、あこがれの舞台を夢見てた野球少年が、日本のプロ野球で大記録を打ち立てました。ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手。約半世紀前に王貞治さんがつくった、シーズン最多本塁打を塗り替えたのです▼15日の阪神戦、本拠地の神宮球場で56、57号を連発。それは、記録の更新とともに、日本球界の呪縛を解いた瞬間でした。これまで何人もの外国人打者が王さんの「55本」超えに挑みながら、力及ばない壁に阻まれてきたからです▼「世界の王」の記録は長く聖域扱いされ、抜くどころか、並んでもいけないという風潮がつづいてきました。破られまいとして勝負を避ける、みにくい歴史のくり返し。それを打破したところに、新たな時代の幕開けを感じます▼ほぼ2試合に1本の驚異的なペースでホームランを打ちまくる29歳の陽気なカリビアン。このままいけば60本の大台にも届くでしょう。当の王さんも「圧倒的な数字。どこまでいくのか、ファンとともに楽しみたい」とたたえます▼投げるほうでは、楽天の田中将大(まさひろ)投手が連勝記録を次々と刷新しています。投打で築いている未踏の峰。飛ぶボールを隠すという組織の失態もあった今季のプロ野球ですが、球界をもり立て、発展させていく原動力は、やはり選手たちです。