2013年9月15日(日)
イプシロン打ち上げ
ロケットの未来を開く
平和利用の活躍期待
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げに成功した新型固体燃料ロケット「イプシロン」は、打ち上げ簡略化やコストダウンで宇宙への“敷居”を下げ、ロケットの日常化に道を開きました。パソコン2台・数人による“モバイル管制”で、管制室の様子は以前からがらりと変わります。米国の宇宙船「アポロ」の時代から半世紀も続いてきた「重厚長大」型の従来ロケットの常識を脱却する革命ともいえます。
日本は、1955年の糸川英夫東京大学教授によるペンシルロケット発射実験以来、科学衛星計画の発展とともに独自のロケット技術を磨いてきました。しかし、世界最高性能とまでうたわれた「M5」ロケットが2006年、高コストなどを理由に廃止。固体燃料ロケットの復活は関係者の悲願でした。
今回、逆境をバネに開発チームは、未来を切り開くロケットを造りあげました。今回搭載した「ひさき」のような宇宙科学や探査、市民生活の向上のための宇宙開発利用で活躍し、世界的な貢献をすることが期待されます。
一方、ロケット技術は、軍事転用も可能です。ロケットには軍事衛星も搭載でき、弾頭を積めばミサイルになります。イプシロンのような即応性・機動性に優れる固体燃料ロケットは、開発チームの意図とは別に、軍事的側面から注目されているのも事実です。
昨年のJAXA法改悪で「平和の目的に限り」業務を行うという規定が削除されたことを受け、今年1月に改定された宇宙基本計画は、JAXAの「安全保障分野における貢献が重要」と明記。安倍首相が「基本計画の実施に当たっては、防衛計画の大綱の見直しを踏まえ、安全保障政策と密接に連携すること」と指示するなど、JAXAが“下請け軍事開発機関”の役割を担わされかねない流れも強まっています。
JAXAの技術者たちが平和利用分野で磨いてきた一流の技術が軍事転用されないためには、国民的な世論と監視が重要です。
(中村秀生)