2013年9月15日(日)
貧困層の子、ぜんそく通院多い
子どもケアする余裕ない
社保・人口研
貧困層の子どもが非貧困層の子どもより、入院やぜんそくで通院する割合が高くなっていることが、国立社会保障・人口問題研究所の分析でこのほど明らかになりました。分析した阿部彩・社会保障応用分析研究部長は「日本においても、親の所得によって子どもの健康に格差が生まれていることが確認された」と述べています。
分析は、2001年に生まれた子ども約4万7千人を対象に健康状態や家庭の経済状況を追跡した「21世紀出生児縦断調査」のデータに基づいて行われたものです。
1歳から6歳の各年齢での入院経験を分析したところ、すべての年齢で貧困層の方が1・1倍〜1・3倍高い割合で入院していました。最も差が大きかった2歳時点では、貧困層の11・85%に入院経験があるのに対し、非貧困層は9・15%にとどまりました。入院の発生率は貧困層が非貧困層の1・3倍です(表)。
貧困層の方が入院の発生率が高い背景について阿部氏は、「貧困層は通院が困難な環境にある」と指摘。「たとえば母子家庭では、母親が仕事を休むと減収になるので、売薬を与えて済まさざるを得ない状況が生まれています。子どもをケアする経済的、時間的余裕がなく、子どもの病気が悪化する要因となっていると考えられる」と述べます。
慢性疾患では、ぜんそくでの通院が、1歳〜3歳の貧困層で非貧困層より多いことが明らかになりました。1歳時点での貧困層は4・36%に通院経験がある一方、非貧困層は3・22%。2歳、3歳で貧困層は6・5%、7・06%の一方、非貧困層はそれぞれ5・1%、6・06%でした。
ぜんそくは栄養バランス、居住環境などが影響し、諸外国の研究では貧困層の方がより多く発生すると報告されており、この点で他国の研究とも一致しました。
阿部氏は今回の分析について、「未就学児への医療費助成などをもってしても健康格差を解消できていないことが示されている。親の所得上昇なども含めた抜本的な貧困対策が必要です」と話しています。
貧困層と非貧困層の分類 子どもを可処分所得(世帯所得を1人あたりで調整した額)が高い順に並べ、真ん中にあたる所得を中央値とし、中央値の半額(貧困線)未満の子どもを貧困層と規定。日本の貧困線は2009年(名目値)で年125万円。
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