2013年9月14日(土)
きょうの潮流
7年後の東京オリンピック開催が決まる前後に、1964年東京五輪当時の映像がよく流れていました。白黒で映った風景や世相も懐かしい。わたしたちが歩んできた歴史の一こまです▼そんな戦後日本の移り変わりをテーマにした絵本『ふるさと60年』が好評です。農村だった場所が都会になっていく様を年代ごとに描きました。町並みとともに、ときどきの子どもの遊びや象徴的な物事を楽しげな絵で紹介しています▼いま渋谷のギャラリーTOMで原画展が開かれています。終戦直後の緑や土のにおいがする風景から、だんだんと道が舗装され、建物や乗り物が変わり、人びとの生活も変容していく。世代をこえ、語り合う家族の姿が浮かびます▼文は歌人の道浦母都子(もとこ)さん。絵はイラストレーターの金斗鉉(キムトウゲン)さん。韓国で生まれ育った金さんは母親が日本人で、18歳のときに日本に移住しました。小学生のころ親戚を訪ねて来日した際、初めて見たテレビや漫画に夢中になった記憶が役に立ちました▼豊かさや発展の陰で失った大事なものを描きたかった、と金さん。現代文明に自然と戯れる子どもたちの姿を融合させた絵「いまから未来へ」に、理想をこめました▼絵本は単に日本の思い出をたどるだけではありません。編集したのは福音館書店の唐亜明さん、中国人です。日本、韓国、中国の3カ国の人間が協力してつくりあげました。ふるさとや家族、隣人を大切にして、助け合って生きること、21世紀の世界が平和になることを願って。