2013年9月12日(木)
メキシコ大統領 付加価値税上げ断念
景気悪化・貧困層負担を考慮
野党「運動の成果」
メキシコのペニャニエト大統領は政権発足以来「財政改革」の柱の一つとして強調してきた付加価値税(日本の消費税にあたる)の引き上げを断念しました。大統領は、景気や貧困層に与える悪影響などを考慮したものと説明。反対集会を組織してきた野党勢力は、反対運動の成果だと歓迎しています。
ペニャニエト政権はこれまで財政悪化を解消する有力な手段として付加価値税(現行税率16%)の引き上げや食料・薬品の非課税措置撤廃を主張してきました。
しかし、大統領が8日に行った「財政改革」の基本方針演説は、経済成長率が予想を下回る見込みとなっていることを認め、この時期の付加価値税増税は「人々の消費と財産に否定的な効果をもたらしかねない」と指摘。「もっとも貧しい世帯が収入の半分を食料購入に充てていることを考慮し、『財政改革提案』に食料・薬品への付加価値税課税を含まないことを決定した」と述べました。
累進的なものに
大統領はまた、付加価値税の税率を引き上げず、食料・薬品以外の非課税品目(医療費、都市内交通費、書籍・雑誌)も維持すると明言しました。
「財政改革」案では、高所得者への増税、株取引利益への課税強化の方針を明らかにしました。大統領は、今回の財政改革が「より稼いだものがより多く支払うという高度に累進的なものとなる」と説明しました。
全国で抗議行動
付加価値税の引き上げについては、中道左派の野党・民主革命党(PRD)や労組、市民団体が強く反対。数回にわたり、全国的な抗議行動が取り組まれてきました。
メキシコの週刊誌『プロセソ』(電子版)9日付は、PRDやその党内組織である「民族再生運動」が、「食料や薬品に付加価値税を適用しようというペニャニエト大統領の意図に対するブレーキとなった」と指摘しています。
PRDのサンブラノ全国議長は同誌で、新自由主義反対を主張してきたPRDの立場の勝利だとして、今回の案を歓迎しました。同時に議長は、右派勢力の抵抗が予想される国会審議が重要になるとして、市民団体などとの共同をさらに強める必要性を強調しています。
有力紙ホルナダ(電子版)8日付はモンテレイ工科大学経済ビジネス研究所のホセ・デラクルス所長の見解を紹介。所長は、政府がもっとも経済力のある層に課税強化する方向を示したことを「重要な転換をなすものであり、(今回の)提案には肯定的に驚かされた」とコメントしています。 (菅原啓)