2013年9月5日(木)
きょうの潮流
東京か、イスタンブールか、マドリードか。2020年夏季五輪の開催地が7日のIOC(国際オリンピック委員会)総会で決まります。都市開催ながら各国政府が「国の威信」をかけて招致運動を展開しています▼波紋を広げているのが、高円宮夫人久子さんのIOC総会出席です。下村博文文科相の要請に基づくもので、王室を前面に出すライバル国・スペインを意識した動きのようです▼当然ながら「皇室の政治利用だ」との声が相次ぎました。さらに、宮内庁の風岡典之長官が「招致活動と見られる懸念がある」「両陛下も案じられていると察する」と、異例の苦言を呈しました▼これに「違和感がある」と、“ダメ出し”したのが菅(すが)義(よし)偉(ひで)官房長官ですが、「違和感がある」のは、菅長官の方です。戦後、日本国憲法は天皇を「国民主権」に基づく「国民統合の象徴」と明記して、国政と切り離してきました▼これを変えようというのが安倍政権です。自民党の憲法改正草案では、天皇を「元首」にすると明記。国民主権を否定しています。安倍政権はすでに、沖縄や奄美を切り捨て、全土を米軍基地にするサンフランシスコ条約・安保条約発効の4月28日を祝う式典に天皇を出席させた“実績”があります▼菅長官は最高裁の山本庸幸(つねゆき)判事が、集団的自衛権の行使に向けた憲法解釈の変更を批判した際にも「違和感がある」と反論しています。この人の口癖なのかもしれませんが、裏返せば、多くの国民の常識に共感できない異様さの表れでもあります。