2013年9月4日(水)
主張
増税点検会合報告
これで強行とは許されない
安倍晋三政権がねらっている、来年4月からの消費税増税についての「集中点検会合」が先週開かれ、甘利明経済財政政策担当相が3日、安倍首相に報告書を提出しました。60人の有識者からの聞き取りで、予定通りの増税実施を支持する意見が多数だったといいます。しかし、これで消費税増税の実施に国民の同意が得られたと考えるなら、大間違いです。60人の大半は、財界関係者や政府と民間のエコノミストです。消費者や中小企業の代表はごく一部で、とても国民世論を反映していません。国民の圧倒的世論を踏まえるなら、来年4月の増税は断念すべきです。
国民世論との乖離は明白
消費税増税に「賛成」43%、「反対」49%(「朝日」8月26日付)。
「予定通り引き上げるべきだ」は21%、「段階的に」「先送りすべき」と「5%維持」をあわせると76%(「毎日」同日付)。
「予定通り」は17%、「柔軟に」と「引き上げ反対」をあわせると79%(「日経」同日付)…。
最近のマスメディアの世論調査が明らかにした、国民の世論動向です。政府の「集中点検会合」の結果との乖離(かいり)は明らかです。
安倍政権が、来年4月からの消費税増税にむけて、4〜6月期の国内総生産(GDP)などに注目するとともに、「点検会合」を開くことになったのは、増税の実施は「経済状況等を勘案して」との法律に縛られ、いわば自縄自縛の状態になっているためです。裏返せば、増税実施の条件を整えようとした安倍政権の経済政策「アベノミクス」では、経済も国民の暮らしも好転していないことを浮き彫りにしています。
政権発足以来8カ月近くたった「アベノミクス」の結果、大企業のもうけや大資産家のふところは改善しても、勤労者を中心に国民の所得は増えていません。「アベノミクス」は金融を活発にすることで消費者物価の「2%上昇」を目標としていますが、実際に起きているのは、収入が増えないのに円安などで石油製品の価格や生活必需品の値上げが相次ぐ、悪い物価上昇です。こうしたなかで消費税を増税し、国民から購買力を奪えば、経済も暮らしも致命的な打撃を受けるのは目に見えます。
消費税の税率を現在の5%から8%に引き上げれば、国民の負担は約8兆円増えます。再来年10月から予定されている10%への引き上げとあわせれば13・5兆円の負担増です。こうした、ばく大な負担増を、法律が成立しているというだけで、わずか60人からの聞き取りや、短期間の経済動向だけで決めてしまおうというのは無謀のきわみです。来年4月からの増税は中止すべきです。
消費税増税に頼らない道
もともと、低所得者ほど負担が重く、増税すればそれだけ国民の購買力を吸い上げて経済を悪化させる消費税は、社会保障などのための財源対策として、もっともふさわしくないものです。増税すれば経済が悪化し、財政にも悪影響をもたらすことが明らかです。
消費税を増税し、社会保障の財源に回すという「一体改革」の口実はすでに崩壊しています。消費税増税は断念し、国民の所得を増やす景気拡大と、大企業・大資産家優遇税制の是正で財源を確保する、消費税増税に頼らない道に転換すべきです。