2013年9月2日(月)
介護保険から要支援外し
「財政負担減らし」が目的
田村厚労相 本音語る
安倍政権が介護保険から「要支援1」「2」の人を外そうとしている問題で、田村憲久厚労相が、目的は「財政負担を減らす」ことだと本音を語っています。
「(要支援の)本人や家族に話を聞くと、(保険から外せば)金銭的にも時間的にも介護への負担が増して、例えば仕事にも影響が出る」。8月8日の会見で記者からこう問われた田村氏。要支援者は「介護保険から外す」「地域支援事業にする」と明言しつつ、「財源は介護保険から出る」と言い訳しました。
しかし、現行の「地域支援事業」は、「要支援」「要介護」と認定された人が受けられる介護保険の保険給付とは全くの別枠です。
同事業は、虐待防止を含む「包括的支援」や「介護予防」など4種類の事業がありますが、詳細な中身は市町村の裁量任せです。人員基準や運営基準もありません。財源は介護保険財政から出るものの、介護給付見込額の3%(厚労相の認定を受ければ4%)以内という上限があります。田村氏自身、同日の会見で「(地域支援事業は)介護保険の制度ではない」と述べています。
さらに21日の会見で「(要支援者への)サービス提供の水準を下げるということになりかねない」と記者に迫られた田村氏は「財源は介護保険から扱う」と繰り返しながら、次のような本音をもらしました。
第一に、「いまの介護保険でやっていると、一律のルールの中でのサービスになる。そこは地域でそれぞれフレキシブル(柔軟)に対応できるようにする」。サービスの「質も量も」市町村に「考えていただく」。「NPO(非営利団体)や地域のいろんな団体を使うという方法もある」
第二に、「地方も努力をすれば、自分のところの財政負担というものも助かる。効率化を果たせば」。「逆に言えば、工夫しないところは、結局は負担は同じように増えていくという話になる」
要するに、サービスの水準について全国一律のルールがある介護保険から要支援者を外し、市町村任せの「地域支援事業」に移せば、サービスの質も量も引き下げが可能になるということです。財政難に苦しむ市町村に要支援者へのサービスを丸投げして介護費用の削減を実行させる、という思惑が丸見えです。
要支援者を介護保険から外した場合に必要な支援を保障する手だては、何ら示されていません。かわりに田村氏は「質は絶対落としていただいては困る」と述べ、市町村に矛先を向けました。
「質」を保障する国の責任を投げ捨てて市町村に丸投げし、財政負担を減らすよう迫っておきながら、その市町村に「質を守れ」とお説教だけするというのは、無責任の極みです。
(杉本恒如)
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