2013年8月30日(金)
保育士、半数以上で認可
小規模保育事業 検討部会が基準緩和
子ども・子育て会議基準検討部会は29日、国が新たに支援しようとしている「小規模保育事業」(定員6〜19人)ついて、保育従事者の半数以上が国家資格を持っていればよいとする認可基準を決めました。現行の認可保育所(定員20人以上)が全員有資格者とされているのに対し、きわめて低い基準となります。
安倍政権は「待機児童解消加速化プラン」の柱の一つに小規模保育事業を位置づけており、認可基準を「今夏をめどに固めて」おき、「早期の受け皿確保を進めていく」としています。有資格者を半数以上とする小規模保育事業には、認可外保育所が多く移行すると見込まれています。
委員からは「(小規模保育の)認可基準について賛同するが、保育所の規制緩和に使われることのないようにしていただきたい」(日本保育協会の坂崎隆浩委員)などの発言がありました。
そのほかの基準については、敷地面積は認可保育所と同基準とし、給食は原則として自園調理で、委託も可能としました。
解説
子どもの命脅かす保育の質引き下げ
子ども・子育て会議基準部会が小規模保育事業(定員6〜19人)の認可基準を急いで決めた背景には、安倍政権の「待機児童解消加速化プラン」があります。
安倍政権は、待機児童解消を求める保護者の声を無視できず、2年間に定員20万人分を増やすという「プラン」を6月に発表しました。その柱の一つに、「小規模保育事業など新制度の先取り」をすえているのです。
「子ども・子育て支援新制度」(新システム)では小規模保育に対しても新たに財政支援が導入されます。その実施(2015年予定)を「先取り」して小規模保育への支援を行い、「即効性のある受け皿」として拡大するというのが、安倍政権の「プラン」です。保育の量的拡大を口実にして大幅な規制緩和を進め、保育を安上がりにするねらいです。
基準部会が29日に大筋で決めた小規模保育事業の認可基準はきわめて低く、国家資格をもつ保育士は半数でよいとされています。
現行の認可保育所の場合、保育従事者の全員が有資格者であることが義務付けられています。東京都が安上がりに済ませようと独自基準で整備してきた認証保育所でさえも、有資格者は6割以上とされています。
これと比べても低い認可基準を国が新設し、保育の質の引き下げを後押しする形になります。国家資格である保育士を、国自らが軽視することです。
安倍政権は、待機児童の8割を占める0〜2歳児の「受け皿」として小規模保育を位置付けています。「多様な主体が多様なスペースを活用」するという考え方です。ビルの一室でも開業できるイメージです。
0〜2歳児は、保育施設での死亡事故が圧倒的に多い年齢です。技術や専門性が求められる乳児保育の規制を緩めれば、子どもの命はますます危険にさらされます。
このようなやり方では、安心して預けられる保育は実現しません。保護者が求めるのは、子どもの安全と発達のための環境が保障された認可保育所の整備です。(杉本恒如)