2013年8月29日(木)
福島第1原発 汚染水タンク ずさんな管理
7月上旬には漏れ始め 2人で930基を巡回
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東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)で貯留タンクから大量の高濃度放射能汚染水が漏れた問題で、漏れ始めた時期は、遅くとも7月上旬からの可能性があるとの見方が浮上しました。また、タンクの汚染水漏れを監視するパトロールが大ざっぱで、水たまりや結露の情報も記録として残していなかったことが明らかになりました。いずれも27日開かれた原子力規制委員会の汚染水対策検討会で東電が報告しました。
線量上昇の兆候
東電は、漏れたタンクに近い無線中継所で作業している作業員のベータ線による被ばく線量の推移を公表。7月以前に確認されなかった被ばく線量が、同月上旬から「上昇の兆候」を示すようになったといいます。その後も、被ばく線量は上昇し、8月上旬には1ミリシーベルトに達しています。
作業員は無線中継所内や周辺で、機材の出し入れなど1日2時間半作業していました。
中継所は、漏れたタンクから約20メートル離れた場所に建ち、漏れた汚染水が排水溝に流れ込んだ経路沿いにあります。汚染水にはベータ線を出すストロンチウム90などの放射性物質が大量に含まれていて、中継所付近の土からはベータ線で毎時95ミリシーベルトの放射線量を検出しています。
東電はまた、汚染水は「微少な漏えい」から始まり、徐々に増え、6時間で5トンに相当する漏えい量にまでなったと推定しました。
経験頼ると釈明
一方、これまでのパトロールについても問題点が出されました。東電によると、パトロールは1日2回。社員2人が1回2〜3時間かけて、広い敷地のあちこちに設置されている930基のタンクの見回りをしていました。規制委の更田(ふけた)豊志委員は「走って回ったような感じ」と述べました。
東電は「経験に頼る面が大きかった」「マンパワーにも限りがあった」などと釈明。水たまりを見つけても「疑わしくないと判断すれば」放射線量を測定せず、水たまりや結露の情報も記録として残していなかったことを明らかにしました。
規制委側からは、保安検査官が再三、東電にパトロールやタンク対策の問題点を指摘したのに、改善されなかったとの報告もありました。
検討会ではまた、漏れたタンクが当初、別の区画に設置されたものの、地盤沈下が起きたために解体され、現在の区画に移設されたこととタンク漏れの関係についても議論されました。
タンクの底面がタンクの内側のボルトで連結する構造で、いったん漏れ出したら止めることができないなど保守点検の方法が確立されていないことも判明。規制委側は、漏れた原因の特定を急ぐとともに、タンクの底面の対策を立てないと、漏えい事故があちこちで起きる恐れがあると指摘。東電に対し、移設されたタンクだけに問題を限定しないよう求める意見が出されました。