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2013年8月29日(木)

「はだしのゲン」閲覧制限撤回

市民の良識が勝った

原爆の実相、子どもの自主性を

松江市教委に反対意見・抗議次々

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 松江市教育委員会(清水伸夫教育長)が広島の原爆被害を描いた漫画「はだしのゲン」を市内の小中学校の児童、生徒に見せないよう閲覧制限していた問題は、幅広い批判の声の広がりのなか、26日の教育委員会議で市教委の要請は撤回されました。経過を見ると市民の良識が見えてきました。 (島根県・桑原保夫)


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(写真)「はだしのゲン」 昨年12月に亡くなった漫画家・中沢啓治さんが自身の被爆体験をもとに描いた漫画。主人公の少年、中岡元が、広島の被爆で家族を亡くしながら、激動の時代を必死に生き抜く姿を描いたもの。実写映画やアニメ映画、テレビドラマにもなり、英語やフランス語などに翻訳され、世界に広がっています。

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(写真)多くの市民が傍聴した教育委員会議=26日、松江市役所

 発端は昨年8月、市議会に出された「『はだしのゲン』には天皇陛下に対する屈辱、国家に対しての間違った解釈、ありもしない日本軍の蛮行が掲載されている」と、小中学校図書室からの撤去を求めた陳情です。

 9月市議会の教育民生常任委員会では、日本共産党の飯塚悌子議員(当時)が「議会が学校に図書を置いてよいかどうかなどに干渉すべきではない」と主張し、12月議会では全会一致で不採択になりました。

県内外から批判

 陳情したのは高知市に住む男性。日本共産党や日教組などを攻撃し、市民集会の妨害を繰り返している人物です。松江市教委にも再三押しかけていました。男性は、高知市議会にも昨年11月に同様の陳情を行いましたが、全会一致で不採択になっています。

 しかし、松江市教委は、日本軍の斬首や女性暴行の描写を問題にし、教育委員会議にも諮らず、12月17日の校長会で自由に閲覧できない閉架措置を要請。今年の1月にも再度要請しました。

 この問題が今月になって明らかになると、批判の声が県内外に広がりました。日本図書館協会の「図書館の自由委員会」(西河内靖泰委員長)は22日、市教委と清水教育長に、子どもたちの自主的な読書活動を尊重し、閲覧制限を「再考」=撤回するよう求める要望書を送付。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)も23日、「原爆の実相を伝える作品。制限する理由はない」と市教委に閲覧制限のすみやかな撤回を求める要請書を送りました。市教委には約3000件の意見が寄せられ、3分の2が反対、抗議の申し入れは28団体にのぼりました。インターネットでは反対の署名運動が広がりました。

共産党申し入れ

 日本共産党市議団(3人)は16日に市教委に事情聴取したのに続き20日、清水教育長と内藤富夫教育委員長あてに閲覧制限の撤回、議会が全会一致で不採択にしたのに閲覧制限に至ったのはなぜか、経過と真相、責任の所在を市議会、市民に明らかにするよう申し入れました。21日にも新日本婦人の会松江支部など5団体が撤回や閉架を決めた事実経過を明らかにすること、表現の自由などを求め申し入れました。

 22日、閉架問題が初めて審議された教育委員会議(5人)では市教委の対応に関する学校への聞き取り調査について、小学校は閉架の「必要なし」「再検討」が合わせて48%、中学校は50%が「必要なし」と回答し、必要としたのは5校(10%)だけだったことが報告されました。

 改めて開かれた26日の教育委員会議で、「手続きに不備があることから、昨年12月17日以前の状態に復するのが妥当」と委員全員一致で要請を撤回することになりました。

 会議を傍聴した西尾糸子さん=市内黒田町=は「撤回は当然の措置です。しかし、『手続きに不備があった』ので元の状態に戻すと結論付けられたことには疑問が残ります。長く読まれ、平和教育にも使われた本に市教委は今になってどうして問題にしたのかを明らかにしてほしかった」と不満を話します。

 県教職員組合の入江克則書記長は「問題の本質は手続きの不備ではなく、市教委が学校図書館の運営に不当介入したことです。学校図書館のあり方や市教委と学校との関係などの原点こそ明らかにされるべきだ」と批判します。


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