2013年8月27日(火)
衆院選挙制度改革
第三者機関は国会軽視
各党間協議の再開こそ
衆院の選挙制度改革をめぐって、自民党は月内にも第三者機関の設置を野党各党に呼びかけると報じられています。安倍晋三首相の意向を踏まえたもので、衆院議長の下に置くことを提案します。これは、2011年秋から続く各党協議の積み重ねを無視した極めて乱暴なやり方です。
首相は、通常国会が閉幕した6月26日の会見で、衆院選挙制度をめぐる各党間協議の「こう着状況」を打開するために「民間の有識者が冷静かつ客観的な議論を行う第三者機関」の設置を提案。今月7日には、石破茂幹事長に検討の加速を指示しました。
重要な到達
しかし、この間続いた各党協議の重要な到達は、現行の小選挙区制度が民意をゆがめるという問題を持っていることを全ての政党が認めている点にあります。
6月25日の協議では、全政党が一致して「よりよい選挙制度を構築する観点から、現行(小選挙区)並立制の功罪を広く評価・検証し…抜本的な見直しについて、参議院選挙後速やかに各党間の協議を再開し、結論を得る」と確認しています。自民党はこの確認通り政党間協議こそ進めるべきです。
選挙制度の構築は、憲法が「選挙に関する事項は、法律でこれを定める」(47条)と規定するように、国会の重要な責務です。
96年の小選挙区制導入以来、「抜本的な見直し」という前向きの変化が国会で起こっているにもかかわらず、それを「こう着状況」などと見限って、“第三者に議論を委ねよ”と迫ることは、国会を著しく軽視するものです。1年半にわたって積み上げてきた各党間の議論をご破算にする道理は、首相にも自民党にもありません。
他党から「選挙制度は国会が自ら決めるべきだ」(公明幹部)、「引き続き政党間協議で結論を得るよう努力すべきだ」(民主幹部)などの声が出るのは当たり前です。
だいいち、「第三者機関」や「有識者」に議論を委ねたからといって、良い結論が必ず得られるというわけではありません。その一例が、89年に設置された首相の諮問機関で、現行の小選挙区比例代表並立制の導入を答申した第8次選挙制度審議会(8次審)です。
害悪明らか
小選挙区制が4割の得票で7割の議席を獲得し、民意を極端にゆがめる害悪を持つことは明らかになっています。時事通信の世論調査(1月)では現行制度を「見直すべきだ」と答えた人が68・2%にも達しました。「投票価値の平等」をめぐって違憲・無効判決が連発され、選挙制度として致命的欠陥を抱えているからこそ、「抜本的な見直し」が議論されているのです。
大手メディアには「有識者に改革案作りを委ねる時期に来ている」(「読売」18日付)などの論調が見られますが、そのような主張をする資格はありません。8次審では、会長に「読売」社長がすわるなど委員27人中12人が大手メディア関係者でした。小選挙区制を導入した反省もないまま、性懲りもなく「第三者機関」の設置を言い募り、「抜本的な見直し」に向けた政党間の協議に水を差すべきではありません。(竹原東吾)