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2013年8月27日(火)

主張

被災者支援法

たなざらしはもう許されない

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 東京電力福島第1原発事故の被災者の健康や生活を支える「子ども・被災者生活支援法」ができて1年以上もたつのに、政府はなんら具体的な対策をとっていません。この不作為は違法だとして原発被災者19人が国に支援策の早期具体化を求める裁判を東京地裁に起こしました。原発事故から間もなく2年半、先の見えない避難生活の長期化に心身とも疲弊している被災者の切羽詰まった訴えです。国はこの叫びを真剣に受け止め、根本から姿勢をただすべきです。

いつまで我慢強いるのか

 裁判を起こしたのは福島、宮城、栃木各県の市町に事故当時住んでいた人たちです。いずれも放射性物質に汚染された危険があるのに、国が決めた避難指示区域外であるため、従来の政府の対策の枠組みから外されています。

 子どもの健康への影響を心配して遠方に自主的に避難した人もいれば、居住地に残ったままで除染などを続けながら暮らしている人もいます。仕事の関係で父親だけが残り、母子で避難している家族もいます。どの家族も子どもたちの健康への不安を抱えながら生活し、家族分散など二重生活による家賃負担増や移動費などの経済的負担を強いられています。

 これらの人たちを含めて被災者全体を国の責任で支援するために制定されたのが「子ども・被災者生活支援法」でした。同法は昨年6月の国会で、子どもを放射線被害から守りたいという福島をはじめとする父母たちの痛切な要求をうけ、日本共産党を含む超党派の議員立法で提案されて全会一致で成立、ただちに施行されました。

 同法は、原発事故で拡散した放射性物質による放射線が「人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていない」との認識を示し、被災者の不安解消と安定した生活実現に寄与すること、とくに子どもや妊婦などへの配慮が必要であることを掲げました。

 被災者が、居住地に残るか、転居するか、いったん避難してから居住地に戻るか、など自らの意思で選択できるよう、どのケースでも「適切に支援する」ことを基本理念に記しました。これは画一的な線引きで被災者への支援を差別しない方向に道を開くものです。

 ところが施行後1年2カ月が過ぎたのに、法律が国に策定を義務づけた「基本方針」づくりは一向に進んでいません。「基本方針」で「一定の基準以上の放射線量」の地域などを具体化しないことには支援策は動きようがありません。

 復興庁のなかでどの部署が「基本方針」づくりを担当するのかという初歩的なことさえ決まっていません。法律制定後、1年以上も具体化が放置されたことなどほとんど前例がありません。今年6月、復興庁官僚が具体化の先送りをうかがわせることを書いたツイッターの文書が大問題になりました。その後も事態がまったくただされていないことは重大です。たなざらしはもはや許されません。

ただちに基本方針を

 原発被災者の苦痛と生活困難がすすむなか、一刻の猶予もありません。国は裁判で争うのでなく基本方針策定に着手すべきです。

 原発事故で生活を奪われた人たちが東電に賠償を求める訴訟も始まっています。国と東電は被災者に誠実に向き合う姿勢に転換することが求められます。


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