2013年8月23日(金)
日の丸・君が代強制記す教科書
都教委また排除
東京都教育委員会は22日の定例会で、都立高校で2014年度に使う日本史教科書を採択しました。「日の丸・君が代」をめぐり「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」との記述にたいし、都教委が「不適切」と各学校に通知した実教出版の教科書は、前年度に続いて選定した学校がなく、採択ゼロとなりました。
都立高校の教科書は、各学校の選定を受けて都教委が採択します。都教委は6月27日、実教出版の教科書の記述について、都教委の考え方とは異なるとして、同社の教科書の使用は「適切ではない」とする「見解」を決め、各学校に通知しました。
定例会では、101団体が「見解」撤回を求める請願を都教委に提出したことが報告されました。
都教委は昨年も同社の教科書を選定する予定だった各学校に「都教委の考え方を踏まえてほしい」と電話するなどして干渉。前年度まで数十校で選ばれていた同社の教科書を選定した学校はゼロになりました。
「妨害は違憲」やり直し要求
東京都教育委員会が実教出版の高校日本史教科書を選ばないように各校の選定に干渉して22日の定例会で採択ゼロとした問題で、「都教委の高校教科書採択妨害を許さない実行委員会」は同日午後、都庁内で会見し「教育現場の意向を踏みにじる前代未聞の暴挙だ」と抗議しました。
実行委員会は翻訳家の池田香代子氏、ジャーナリストの西野瑠美子氏、山田朗明治大学教授ら11氏が呼びかけて、日本出版労働組合連合会(出版労連)、子どもと教科書ネット21など約30団体が参加。実教出版を排除する都教委の「見解」(6月27日議決、各都立高校に通知)を撤回するよう求めてきました。
会見で、実行委員会呼びかけ人の高嶋伸欣琉球大学名誉教授(教育学)は「生徒を知る高校の担当者が判断した教科書を尊重するのが教育のあり方だ」と語り、都教委による採択妨害を「自分の言いなりになれという考え方が根底にある」と強く批判しました。
子どもと教科書ネット21常任運営委員の石山久男氏は「予想通り実教出版はゼロ。異常事態だ。都教委が強要した結果と見るしかない」と採択結果を報告しました。
出版労連の吉田典裕副委員長(教科書対策部長)は都教委の行為は憲法19条が定める思想・信条の自由や21条の言論・表現・出版の自由に明確に違反し、民主主義を後退させると指摘。「権力に批判的なことを書いたら不採択となれば、教科書からそういう記述がなくなっていく」と危機感を語りました。
実行委員会、出版労連、子どもと教科書ネットは同日、抗議文を都教委にそれぞれ提出。教育現場の意向を踏まえて採択をやり直すように求めました。
露骨な介入許されない
日本共産党の里吉ゆみ東京都議(文教委員)の話 党都議団は都教委に対し、学校の教科書選定に圧力をかけたり介入したりしないこと、都教委の「見解」と異なるという理由で特定の教科書を排除するのはあってはならないことを、再三にわたり申し入れてきました。
教育内容と不可分の教科書の選定にあたり、露骨に介入する都教委のやり方は、許されません。都教委が6月27日に議決した「見解」は撤回し、学校現場の自主的な選定による教科書を使用できるよう採択をやり直すべきです。