2013年8月19日(月)
日本の異常 大学教育
日本再生の柱(安倍政権)と言いながら
毎年、予算削減の怪
安倍晋三政権が「世界の中で競争力を高め、輝きを取り戻す『日本再生』のための大きな柱」(教育再生実行会議提言)と位置づけるのが、大学教育です。ところが大学教育予算は10年連続で減らされ、増額される気配はありません。(浜島のぞみ)
各国と比較最低の水準
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高等教育(大学や高等専門学校)の予算を国際比較すると、日本のお粗末さは一目瞭然です。
経済協力開発機構(OECD)諸国のなかで、国内総生産(GDP)に対する高等教育機関への公財政支出は平均1・4%。これに対し、日本は0・7%と最低水準です。(図)
さらに、高等教育機関への公財政支出の伸び率をみると、この10年で各国が支出を増やし、なかでも韓国は1・8倍に達しています。それなのに、日本はほぼ横ばいのままです。教育に対する姿勢の違いは明らかです。
日本では、2004年の国立大学法人化を起点に、大学側の裁量で使える運営費交付金が、毎年、およそ1%ずつ減らされつづけています(図)。運営費交付金の8割程度を占めるのは「基盤的経費」。最低限の研究費、人件費、水光熱費、事務費など、大学運営に必要不可分な予算です。
東大と京大廃止に匹敵
文部科学省国立大学法人支援課の担当者は「大学サイドから『予算が厳しい』という声が聞こえてくる。運営に支障をきたさないよう、削減に歯止めをかけ、予算を獲得していきたい」と話します。
ところが安倍内閣は、概算要求でシーリング(上限)のしばりをかけ、運営費交付金を1%ずつ減額しつづける方針を変えていません。予算総額を減らし、特定の研究に重点配分する“アメとムチ”を続ける姿勢です。
大学法人化以降、政府は、新しい学部開設やプロジェクトなどに対して審査のうえで交付する「競争的資金」を推進。基盤的経費とは別建てで、短期間で成果をあげる研究を優遇しています。
国立・私立・大学で構成する「学術研究懇談会」は5月に提言を発表し、「(国は運営費交付金を)わずか10年間で1600億円も削減した。これは東大と京大の廃止に匹敵する額だ」と告発。「基盤的経費を削る方向性は研究者や大学を養わないことと同じ。国際競争力を確実に低下させる」と危機感をあらわにしています。
研究費少なく科学的検証できません
大学キャンパス内の学生食堂や付属病院の廃食用油をバイオディーゼル燃料に精製する循環システムの研究をしている山梨大学大学院の竹内智教授(工学博士)を訪ねました。
実験室には大型の廃油回収タンクや精製装置が並びます。
竹内教授は「教育・研究のためには科学的な測定に基づいて検証することが必要です。しかし、研究費がわずかなために計測機器を買えず、検証できない」と嘆きます。
燃料へ精製する機械自体が高額であることに加え、成分分析器は1台で数百万円。十数項目の成分分析にそれぞれ1台ずつ必要です。
バイオディーゼル燃料に関心が高まるなか、竹内教授の研究室では市民公開講座を開催してきました。「市民が持ち込む廃食用油が実用に適するかどうか調べたくても、測定機器が備わっていないためにできません」。研究を地域社会に還元できない歯がゆさを訴えます。
資金を競争で獲得させるやり方では、すぐ息切れしてしまい、共同研究も進みません。
「教育費・研究費がしわよせを受け、学生の基礎学力の低下にもつながるのが教育予算削減の問題です。全体的な底上げこそが必要です」
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