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2013年8月19日(月)

主張

米の無人機攻撃

暴力は平和をもたらさない

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 「私には夢がある」―米公民権運動の指導者キング牧師が、首都ワシントンでの集会で25万人もの参加者に呼びかけてから、今月で半世紀です。その牧師がノーベル平和賞の授賞式で言葉を残しています。「暴力は永続的な平和をもたらさない。暴力は社会問題を解決するどころか、新たなより複雑な問題を生み出すだけである」

 4年前のノーベル平和賞授賞式で、米国史上初の黒人大統領となったオバマ氏は、自身をキング牧師の業績の「直接の結果」としながら、「力の行使が、必要なだけでなく道徳的に正しい時がある」と述べて、牧師に挑戦しました。

国連事務総長も批判

 米国がパキスタンやイエメンなどで、無人航空機を使った攻撃を一段と強めています。「テロとのたたかい」としてのこうした攻撃は、7月には月間で年初来の最多にのぼったと指摘されています。今月ワシントンで開かれた無人兵器の展示会の盛況ぶりは、世界的にも報じられました。

 オバマ米政権は、自国兵士を危険にさらさずにすむ無人機攻撃を、「テロとのたたかい」の切り札と位置づけています。一方で、わがもの顔で他国に侵入し、その国民を殺害する米国のやり方には、国際的な批判が高まっています。

 国連の潘基文(パンギムン)事務総長は13日、訪問先のパキスタンで「武装無人機の使用は、他の兵器と同様、国際人道法をはじめとする国際法のルールに従うべきだというのが国連の立場だ」と述べて、米国による無法な無人機攻撃を厳しく批判しました。

 パキスタン政府も、米国の無人機攻撃を主権侵害だと反発してきました。とりわけ攻撃が一般市民を巻き添えにすることに、国民の強い批判があります。しかも、こうした軍事攻撃はテロを根絶するどころか、逆にテロを誘発しているともみられ、米国の覇権主義的な政策は矛盾を深めています。

 米国は今月、国際テロ組織アルカイダが米国在外公館へのテロを計画しているとして、中東各地の在外公館を一時閉鎖する措置をとりました。アルカイダに属する諸集団のなかでも、イエメンを拠点とする「アラビア半島のアルカイダ」が活動を強めていると危険視されています。米国はイエメンでも無人機攻撃を強めています。

 オバマ政権はアルカイダの首謀者ウサマ・ビンラディンをパキスタンで殺害した2年前、テロリストを追い詰めたと強調していたはずです。この事態は、軍事力でテロはなくせないことをいま一度鮮明にしています。テロは許されません。しかし、テロに無法なやり方で対決することが、新たな困難を生み出しています。

貧困と不正義にメスを

 2001年に米国で起きた同時多発テロへの報復として、ブッシュ前米政権がアフガニスタンに戦争を仕掛けたことが誤りの一歩でした。ブッシュ政権を批判したオバマ大統領も、その誤りを引き継いで「オバマの戦争」に変えるとともに、「テロとのたたかい」を世界に広げています。

 テロに対処するには法による裁きとともに、テロの温床となっている貧困や不正義にメスを入れる必要があります。そのために不可欠な国際協力を進めるうえでも、不正義をさらに拡大する無法な力の行使は許されません。


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