2013年8月17日(土)
安倍首相式辞・閣僚の靖国参拝
「反省どこへ」 地方紙が批判
安倍晋三首相が終戦の日の戦没者追悼式での式辞でアジア諸国への加害の反省や不戦の誓いに触れず、靖国神社に玉串料を奉納したことや、3閣僚の靖国神社参拝に対して複数の地方紙が16日、社説で批判しました。
「閣僚靖国参拝 戦争への反省はどこへ」と題した社説を掲げた北海道新聞は「閣僚の参拝を『心の問題で自由だ』として容認してきた首相の責任は重い」と指摘。「閣僚の靖国参拝による日本への不信感を払拭(ふっしょく)しなければならない時に、逆に増幅させるかのような姿勢は理解に苦しむ。自らは参拝せず、玉串料奉納にとどめることで中韓に配慮したつもりなら認識が甘すぎる」「閣僚の参拝は侵略戦争の肯定と受け止められる」としました。
河北新報は式辞について「1994年の村山富市首相以降、歴代首相は『反省』に踏み込んでおり、歴史認識に関する安倍首相の独自色をのぞかせた形だ」として、「戦後70年の2015年に新たな首相談話を打ち出す際の布石との見方がある。ただ、首相の歴史観は国際的に通用するものでなければ、日本の立場を損ねることになる」と警鐘を鳴らしました。
信濃毎日新聞は靖国神社にある遊就館について「そこには、アジアの人々に苦しみを強いたことへの反省がない。遊就館が主張する歴史観は、戦争への反省から出発した戦後日本の歩みと相いれない」と書いた上で、「首相や閣僚の参拝は、日本が戦争の歴史を正当化しようとしている証拠と受け取られても仕方ない。憲法が定める政教分離原則に照らしても問題を残す」と強調しました。靖国神社が現在、日本の侵略戦争を美化し、戦前は戦争遂行のための国家機関として機能してきたことにも触れています。
閣僚参拝をめぐり東京新聞は「国家の指導的立場にある者は、対立の火に油を注ぐのではなく、解決のための知恵を集めるのが役目のはずだ」、京都新聞も「戦争と植民地支配で日本が近隣諸国に与えた苦痛を思えば、アジアの人々が参拝に神経をとがらせる気持ちに政治家はもっと敏感になるべきではないか」と述べています。
首相の式辞に対して中国新聞は「不戦の決意を明言しなかったことには国民も何か、不気味さを覚えたのではないか」「このところ、領土をめぐる摩擦にしても集団的自衛権の解釈変更への動きにしても、代々積み重ねてきた歴史を突き崩すかのような政治の動きが目立つ」と警戒感を示しました。