2013年8月13日(火)
主張
景気と消費税増税
所得増やさぬ政策の矛盾露呈
安倍晋三政権が来年4月からの消費税増税の判断材料にするとしている、4〜6月期の国内総生産(GDP)の速報値が発表になりました。経済成長率は名目、実質ともプラスになったものの、設備投資はマイナスです。甘利明経済財政担当相は「経済政策の効果が着実に発現している」といいましたが、雇用者報酬の伸びは前期を下回り、国民の所得の回復が遅れているのは明白です。
国民の所得を増やさない経済政策(アベノミクス)の矛盾は明らかです。国民生活が悪化を続けるなか、消費税増税の実施を決めるのは、絶対に許されません。
消費税増税の条件づくり
自民、公明、民主の3党は民主党政権時代の昨年8月、現在5%の消費税の税率を来年4月から8%、再来年10月からは10%に引き上げるという法案を、国民の反対を押し切って成立させました。増税の実施には「経済状況等を勘案して」と条件がついているため、昨年末政権に復帰した安倍政権は、「経済再生」を最優先するとして、「アベノミクス」による金融緩和、財政出動、成長戦略などに躍起になってきました。「経済再生」は、見方を変えれば、消費税増税の条件づくりというわけです。
安倍首相らは、消費税増税のためには、3%以上の実質経済成長と2%の消費者物価上昇を目安にすると繰り返しています。それに照らすと、4〜6月期の実質経済成長率は2・6%(年率換算)と、目標に達していません。大方の予想以下です。物価変動を反映した名目でも2・9%です。個人消費は増えたものの、雇用の改善などに結びつく設備投資は6期連続で後退、住宅投資もマイナスです。景気回復とは程遠い実態です。
安倍政権の内部でも消費税増税に賛否両論がだされており、安倍政権は今月末に有識者会議を開いて検討したうえ、来月はじめに発表されるGDPの改定値などをみて判断するとしています。先週決めた「中期財政計画」や「来年度概算要求基準」でも、消費税増税の計上は先送りしました。
最終的に10%に引き上げられる消費税増税による負担増は、総額13・5兆円にのぼります。国民の購買力がそれだけ強制的に奪われるわけで、景気への打撃は深刻です。実際、1997年に消費税が3%から5%に引き上げられたときには、回復し始めた景気が一気に落ち込み、国民の負担増が長期にわたる「デフレ不況」の引き金となりました。景気が回復していないなかでの今回の増税が、そのとき以上の打撃を暮らしと経済、財政に与えるのは明らかです。
増税やめ所得増やす策を
とりわけ深刻なのは、90年代の終わりから非正規雇用の拡大などで国民の所得が減り続けており、消費税増税による国民生活への打撃がこれまでとは比べものにならないと懸念されていることです。4〜6月期のGDPでも、雇用者報酬の伸びは前期比わずか0・3%で、前期の伸びを下回りました。消費税増税の打撃は深刻です。
もともと、企業の活動を活発にすれば、国民の所得や雇用はそのうち増えるという発想の「アベノミクス」には、国民の所得や雇用を増やす目標がありません。消費税増税を中止するとともに、「アベノミクス」を転換し、国民の所得を増やす景気対策が不可欠です。