2013年8月10日(土)
カリブ共同体・共同市場
欧州5カ国は謝罪を
植民地時代の虐殺・奴隷化で
補償要求へ
カリブ共同体・共同市場(カリコム=カリブ海の14カ国1地域が加盟)は、このほど植民地時代の先住民大量殺害やアフリカ系住民の奴隷化について旧宗主国の欧州5カ国に公式の謝罪と補償を要求する方針を決定しました。(菅原啓)
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中南米の共同テレビ網テレスルなどの報道によると、謝罪と補償を要求する相手国は英国、スペイン、フランス、ポルトガル、オランダ。カリコムは9月初めに、この問題を担当する閣僚会議を開き、法律家や専門家とともに補償要求の戦略を練る予定です。
カリブ海諸国ではこれまで、同様の補償問題を各国が個別に扱ってきましたが、7月上旬にトリニダード・トバゴで開かれたカリコム首脳会議は、加盟国の補償請求活動を調整する機関として「補償委員会」を設置することも決議しました。
委員会設置を主導してきたセントビンセント・グレナディーンのゴンサルベス首相は4日、メディアに対して、「先住民の大量虐殺とアフリカ系住民に強制された奴隷身分という遺産は、この地域の大部分を特徴づける慢性的な貧困と開発の不足の主要な原因となっている」と指摘。対象5カ国との合意には公式な謝罪が含まれるべきであり、その上で適切な補償が行われる必要があるとの考えを明らかにしています。
ジャマイカの「補償委員会」責任者を務めるシェパード氏は「これは金銭の問題ではない」「請求側の国々の発展に役立つ補償のメカニズムについて合意をはかる問題なのだ」と述べています。
学術関係でも補償請求を後押しする動きが活発化しています。ジャマイカに本部を置く西インド諸島大学は8日、補償請求の正当性をテーマとした講座を新設すると発表。講座を担当するハットン教授は、植民地時代の直接体験のない若い世代を教育することが重要だと語っています。
報道によると、16〜18世紀に、アフリカ大陸で拉致され、中南米・カリブ海地域に運ばれた人はもっとも控えめな推計で、約1200万人。その多くが欧州諸国の植民地のプランテーションなどで奴隷として働かされました。