2013年8月9日(金)
集団的自衛権
日本防衛とは無関係 「類型論」は外見だけ
全面的容認で戦争可能に
改憲容認派からも「裏口改憲」と批判を呼ぶ9条解釈変更の動き―。姑息(こそく)なやり口に対し、その内容は憲法9条を破壊し、地球の裏側にまで派兵を可能とする暴挙です。
安倍内閣が狙う集団的自衛権は「自衛」と名が付くものの、日本防衛とはまったく無関係です。日本が攻撃をされていないのに米国など密接な関係のある国への攻撃を理由に海外で武力行使するためのもの。「アメリカと海外で肩を並べて武力行使する」ことが狙いです。ところが安倍内閣は、米艦が攻撃されたときなど、あたかも「日本防衛」と関係があるかのように“類型”を示して議論してきました。
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安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の柳井俊二座長(元駐米大使)は、4日のNHK番組「日曜討論」で、2008年にまとめた報告書(福田首相に提出)について、「結論を言えば、集団的自衛権の行使は国際法上も認められているし、憲法上も許されている。国連の集団安全保障、国際社会として取る措置に参加することも禁じられていない。(それを)当時の報告書には示している、そこは変わりがない」と強調しました。
「自衛艦と併走するアメリカの軍艦が攻撃された場合に反撃できるか」「アメリカに向かう弾道ミサイルを日本が撃ち落とせるか」など、安倍首相から諮問を受けた「4類型」にとどまらず、包括的に集団的自衛権行使を容認する「結論」だったとしたのです。
同懇談会の座長代理を務める北岡伸一国際大学長も、「読売」3日付で、「我々は4類型に限った憲法解釈を考えていたわけではない」として、「これからまとめる報告書では、憲法、国際法解釈、今の安全保障環境を踏まえて、4類型にとどまらない提言になる」と述べています。憲法解釈の変更に批判的な元政府高官の一人は、「もともと『4類型』は、“隣にいる米国が攻撃を受けても何もしないのはどうか”という形で、俗耳に入りやすい論議を導くためのものにすぎず、結論は一般的容認だった」と指摘します。
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これは、集団的自衛権の全面的・包括的容認で、文字通り「地球の裏側」まで行って米国と共に戦争することを可能にする「解釈」です。戦力不保持、交戦権の否認で一切の戦争を否定した日本国憲法9条の「解釈」としては、成り立つ余地のない異常な主張です。
自民党の改憲派議員の一人は「憲法解釈を変えても、何でもできるわけではない。可能とする類型は、国家安全保障基本法や自衛隊法改正で具体的に定める」などと述べます。しかし、「憲法の制約」を取り払っておいて、「法律で制限すればいい」という発想自体が、憲法によって国会を含め国家権力全体が制限を受ける(立憲主義)という根本問題をすり替えています。
正々堂々の議論から逃げる改憲邪道を許さない、草の根の世論の発揮が求められます。(中祖寅一)