2013年8月4日(日)
独が盗聴協力の協定廃棄
国民の批判うけ 1968年米英と結ぶ
ドイツ政府は2日、米国の秘密情報組織、国家安全保障局(NSA)のドイツでの盗聴に国民の批判が高まっていることを受け、冷戦時代の1968年に米英と結んだ情報監視協定を廃棄したと発表しました。
(片岡正明)
野党は引き続き政府追及の構え
ドイツ外務省が2日、発表したところによると、ドイツ政府は1968年に郵便の開封や電話などの盗聴に協力するとした情報監視協定を米英両国と結んでいました。
ウェスターウェレ外相は、「強く求めていた情報監視協定の廃棄によって、個人のプライバシーを守るために必要で正当な結果を出すことができた」と声明を出しました。
NSAはドイツで、日に電話盗聴2000万件、インターネットの通信傍受1000万件、月に両方で5億件と仮想敵国並みの記録を取っていたと独週刊誌シュピーゲルなどで報じられました。
またドイツの情報機関、連邦情報局(BND)が協力したとされ、野党は“米国が法を犯して盗聴していたことにドイツ政府も協力していた”と追及。世論調査では国民の8割が「独政府はNSAの盗聴を知っていた」と答えるなど批判の的となりました。
これに対し、メルケル首相は「(米情報機関も)ドイツの法を尊重しなければならない」としながらも、「米政府に問い合わせ中だ」と説明。NSA問題は9月に行われる連邦議会選挙の争点に浮上しています。
一方、報道によると、独政府関係者は旧ソ連・東欧崩壊後、この協定に基づいて米英側からドイツ側に情報を請求してきた事例はなく、いまや時代遅れの象徴的なものにすぎないと発言。英BBCによると、ドイツの外交専門家のリエッケ氏は、独政府は批判が強いNSA問題に対し国内向けに何らかのアクションを取らざるを得なかった結果とみています。
2日付(電子版)のフランクフルター・アルゲマイネ紙によると、むしろインターネットを丸ごと監視し、情報を取る「XKeyscore=エックスキースコア」というNSAの秘密監視システムが、電子メールなどを容易に傍受できるため、近代的な盗聴に役立つといいます。同システムがドイツのサーバーを監視していると懸念されています。またBNDの秘密プログラムをNSAが利用していた可能性もあり、野党は引き続き、NSAと独政府との協力関係を追及していく構えです。