2013年7月30日(火)
社会保障改悪の国民会議案
無理な口実ばかり
若者にも大打撃 / 大企業は優遇
政府の社会保障制度改革国民会議が29日に示した最終報告書の「総論」案は、いくつかの口実を持ち出して社会保障の制度改悪を正当化しようとしています。しかしいずれも通用しません。
一つは、「すべての世代に安心感と納得感の得られる全世代型の社会保障に転換する」という口実です。現在の社会保障制度が「給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心」になっているという認識に基づいた議論です。
建前の「公平」
欧州の先進諸国と比べ、日本では若い世代が必要とする子育て、住宅、教育、医療などへの公的支援が異常に薄いのは事実です。しかし総論案がめざす方向は、若い世代への支援を抜本的に強めて解決するのではなく、「公平」を建前に高齢者への支援を減らすことでしかありません。
高齢になったときの医療や介護の負担が引き上げられれば、若い世代の将来不安も増し、備えのために現在の支出を切り詰めなければなりません。年金の額が削られ、支給開始年齢がさらに先延ばしされれば、若い世代の将来設計は根底から崩れることになります。
現役世代と高齢世代の対立をあおる議論は成り立ちません。
「若い人々の希望につながる投資」と総論案が絶賛する政府の「子ども・子育て支援」策も問題です。その中身は、保育への公的責任を投げ捨て、保育士資格などの規制緩和を進めて、株式会社の参入を拡大する「新システム」にすぎません。保育の質の低下を招き、子どもの命すら脅かしかねません。
これでは、すべての世代にもたらされるのは「不安感と不納得感」です。
枠外の選択肢
もう一つは、「持続可能な社会保障を構築」するという口実です。
高齢化の進展で社会保障費が増大するのは避けられません。しかし総論案は、主要な財源を消費税に頼る立場を大前提とし、歳入と歳出にかかわる重要な選択肢を議論の枠外に置いています。
日本共産党は、大型開発や軍事費のむだ遣いを改め、富裕層と大企業への優遇税制をただせば、社会保障を再生させる財源は確保できると数字もあげて提案しています。「応能負担」の原則に立った税制改革と、国民の所得を増やす経済改革を進めれば、社会保障を欧州並みに充実させる道も開けます。
ところが安倍政権は、むだ遣いと富裕層・大企業優遇を続けるだけでなく、大型開発のばらまきや大企業への減税を拡大する姿勢です。これらのツケを、社会保障切り捨てと消費税増税で国民に払わせようとしている、というのが実態です。
とめどない制度改悪と消費税増税を、社会保障の「持続のため」と言いつくろったところで、国民の納得は決して得られません。 (杉本恒如)