2013年7月26日(金)
TPP 危険な本質あらわ
交渉文書・内容も日本政府の主張も秘密
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マレーシアで15〜25日開かれた環太平洋連携協定(TPP)の第18回交渉会合は、交渉の秘密主義の問題点を示しました。
交渉が妥結し、TPPが発効すると、日本の経済主権が奪われ、国民生活に深刻な影響が及びます。にもかかわらず、その交渉自体は国民の目と耳を閉ざして行われています。
今回の会合で新規参加した日本の交渉代表団は、利害関係者への説明会を開きながら、参加に際して署名した守秘契約にしばられ、交渉文書や交渉内容はおろか、日本代表団自身が何を主張したのかも明らかにしませんでした。日本代表団の関係者は「TPPは他の通商交渉に増して秘密保持が厳しい」と弁解するありさまでした。
本紙は2011年12月22日付で、「TPP交渉に『守秘合意』」といち早く報じ、交渉文書や交渉内容を知ることができるのがごく一部の関係者に限られ、交渉内容が協定発効後4年間、妥結しなかった場合は交渉の最後の会合から4年間、秘匿されることを明らかにしました。
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TPPの秘密主義の下では、政府がいくら「国益を守る」と力説しても、何の保証にもなりません。むしろ、「国益を守る」保証がないからこそ、国民に明らかにできないといえます。そのようなTPP交渉からは、即刻撤退すべきです。(北川俊文)
全郵便局で米保険販売
日本郵政、アフラックと提携強化
日本郵政が、米保険大手アメリカンファミリー生命保険(アフラック)との業務提携を抜本的に強化することが24日、明らかになりました。傘下のかんぽ生命保険がアフラックと代理店契約を締結。同社のがん保険販売を、同じ郵政傘下の日本郵便が直営する約2万カ所の全郵便局に拡大します。アフラックは2014年秋に日本郵政グループ専用のがん保険を供給します。26日にも基本合意し、両社トップが記者会見して発表します。
日本郵便は08年10月にアフラックとがん保険の販売で提携しましたが、取り扱い郵便局数が1000カ所にとどまることから販売は伸び悩んでいました。
日本郵政 2007年10月の郵政民営化に伴って誕生した持ち株会社。傘下に日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険を持ちます。政府が100%の株式を保有。
解説
米国要求のまま日本市場を開放
環太平洋連携協定(TPP)交渉への日本の正式参加とほぼ同時期となった日本郵政と米アメリカンファミリー生命保険(アフラック)との業務提携は、日本市場を米国の多国籍企業に開放するというTPPの本質を如実にあらわしました。
米国生命保険協会は日本のTPP参加についての公募意見の中で、日本政府が100%の株式を保有しているかんぽ生命保険との「対等な競争条件」を求め、新規業務の拡大は行わないことを要求していました。
アフラックのチャールズ・レイク日本代表は在日米国商工会議所(ACCJ)の名誉会頭を務め、米保険業界の要求を日本政府にぶつける先頭に立ってきた当事者です。
特に重視したのががんや医療、介護などの「第3分野」と呼ばれる保険です。
規制緩和により2001年に第3分野が開放されたとき、米生命保険業界が危機感を示したのがかんぽ生命保険の存在です。全国2万カ所を超える郵便局ネットワークでがん保険などを売り出せば、自分たちのシェアが奪われかねません。
米国保険業界の意を受けて米政府は日本の保険市場への参入問題を懸案に取り上げ、日本のTPP交渉参加の際に設けられた日米2国間の並行協議の焦点の一つとしていました。米政府はかんぽ生命保険と米国の保険会社の間に対等な競争条件が確立されるまで「かんぽ」が新商品を開発・発売しないよう要求していました。
そもそも米国企業のために他国の保険会社の新規事業まで差し止めを求めるというのは異常です。
しかも今回は、これまで要求してきた「対等な競争条件」を超えた業務提携です。「対等な競争条件」という米側の口実は、米多国籍企業の利益拡大のためのご都合主義にほかならなかったことを示しています。
米国の要求に従い、国民の財産である全国の郵便局網を米国の保険会社に開放してしまうところに日本の対米従属ぶりがあらわれています。(山田俊英)
「TPPで再び植民地化」
マレーシア元首相が警告
環太平洋連携協定(TPP)の交渉が行われたマレーシア。同国のマハティール元首相が自身のブログでTPPの危険性に警告を発しています。
米国が主導しているTPPについてマハティール元首相は、強国が弱小国を利用する不平等な条約であると非難し、「弱小国の国内市場に巨大な米国企業を参入させようという米国のたくらみがある」と指摘しています。
さらに「私たちがTPP協定に調印したら、手も足も縛られてしまうことになる」とし、自由に動きまわることで経済を破壊する資本の管理もできず、「再びわれわれは植民地化される」と警告しました。