2013年7月26日(金)
きょうの潮流
チリンと風鈴の下、涼しげに泳ぐ金魚。どちらも夏の風物詩です。先日、東京・江戸川区の金魚まつりを見学しました。ここは、明治時代から金魚の養殖を始めた日本三大産地の一つ▼現在は業者も減りましたが、品質が良く毎年恒例の金魚まつりは家族連れや愛好家で大にぎわい。和金や出目金、琉金やランチュウをはじめ、種類も豊富。なかには数万円の金魚も。家で育てようと、小さいものがよく売れていました▼室町時代に中国から伝わった金魚。いまや日本人の生活や文化に浸透し、欠かせない存在になっています。手軽に飼えることから、家族の一員のようにかわいがっている人も多い。中国では昔から幸せの象徴とされてきました▼祭りの出店者に聞くと、この頃は金魚や風鈴をもとめる若者が増えているといいます。「金魚を見たり、風鈴の音色を聴いているだけで、心が癒やされるそうです。いつもストレスや疲れを抱えているからでしょうかね」▼いまの世の中、金魚や風鈴に限らず、さまざまな“癒やし産業”が盛んです。裏を返せば、それだけ日本全体にゆとりがなくなっている証拠です。いらいら感が募り怒りっぽくなる日常。ニュースでは衝動的な事件が相次いでいます▼先の選挙。ブラック企業の一掃を訴えた共産党に、若者の共感がひろがりました。自分をとり戻したい、優しい心をもちつづけたい、との思い。そこにあるのは、働くことで人間らしさをうばわれ、働くものが虐げられる政治や社会からの転換です。