2013年7月19日(金)
アベノミクス それホント?
大企業が潤えば…というけれど
賃金・雇用には回らない
安倍晋三政権の「アベノミクス」は、大企業が潤えばいずれ家計に回るとして、大企業奉仕の政策を進めています。大企業がもうかれば、賃金が増え、雇用が増加するのでしょうか。(柳沢哲哉)
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「日経」が国内主要企業の社長(会長、頭取などを含む)を対象に実施した「社長100人アンケート」(148社が回答)がそれを明確に否定しています。
還元回答は4.7%
同アンケートは、「上場企業(3月期決算)の2012年度末における手元資金は66兆円と過去最高に達した」として、企業に対し「手元資金をどの分野に重点的に投じるか(3つまでの複数回答)」と質問。「設備投資」が62・2%、「M&A(企業の合併・買収)」が42・6%にのぼる一方、「人員増強」との回答は6・8%、「賃金・賞与などで従業員に還元」はわずか4・7%にすぎませんでした。
ほとんどの大企業経営者は、労働者・雇用に資金を使うつもりがありません。
また、「アベノミクス」の金融緩和による円安の加速が輸出関連産業にもたらした増益効果も、雇用に結びついていないことが明らかになっています。
民間信用調査会社の東京商工リサーチが8日発表した調査によると、主な電気機器、自動車関連メーカー198社の13年3月末の総従業員数は、前年同期比0・6%減少しました。従業員が前年同期より減少した企業が約6割に達しました。
東京商工リサーチは、「大手メーカーの雇用環境は厳しさを増している」と指摘。同調査は、業績の改善が雇用に直結するわけではないことを示しています。
増加はみられず
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企業がもうかれば自動的に賃金や雇用が増えるわけではありません。歴史もそれを裏付けています。厚生労働省の「2012年版労働経済白書」は次のように指摘しています。
「現金給与総額の推移をみると、1997年をピークに減少が続いており、この間、戦後最長の景気拡大期である2002年から08年にかけてもほとんど増加はみられなかった。この時期においては、企業の売上高、経常利益とも、これまでの最高を更新する水準にまで増加したが、人件費については、1990年代の水準を概(おおむ)ね下回る水準にとどまっていた」
ルールの確立を
「アベノミクス」は一握りの多国籍企業に利益をもたらすだけです。しかも、労働法制の規制緩和などによって、正社員を解雇しやすくし、低賃金で不安定な雇用を拡大させるといった国民から所得を奪う政策を進めようとしています。労働者の使い捨てに拍車をかけ、「ブラック企業」が氾濫する危険な政策です。
必要なのは国民の所得を増やす政策です。解雇の規制、非正規雇用労働者の正社員化と均等待遇、「サービス残業」の根絶、長時間・過密労働の是正、最低賃金の引き上げ、労働災害の防止と認定基準の緩和など、人間らしく働けるルールを確立することが求められます。