2013年7月17日(水)
侵略と植民地支配の事実
否定するのは誰か?
破たんした橋下氏の妄言
日本維新の会の橋下徹共同代表は、14日放映の民放番組で、「自民党のなかには侵略(であったこと)を否定するような政治家がいる。これをやってしまうと世界に対する挑戦になる」などと、自民党に対する批判者のように振る舞いました。
橋下氏の振る舞いは、正しい歴史観に立ってのことではありません。それは、同じ共同代表の石原慎太郎氏が「侵略じゃない。あの戦争が侵略だと規定することは自虐でしかない」(「朝日」5月18日付)という発言をしているのに、それを正そうとしていないことからも明らかです。
そのうえで、橋下氏は「慰安婦制度が必要なのは誰だってわかる」(5月13日)という自らの妄言を合理化するために、「事実誤認に基づく非難を受けた場合は反論しなくてはならない」(4日)と主張。「世界各国の軍も戦時において女性を利用していた」「ナチスのユダヤ人虐殺のホロコーストと同じように扱われているのは違う」と“反論”を試みています。
しかし、「侵略を否定する」ことが許されないのは、平和や人道に対する犯罪を認めることになるからです。日本軍「慰安婦」問題こそ、日本によるアジア太平洋への侵略戦争で引き起こされた、きわめて深刻な人権侵害、戦争犯罪にほかなりません。国連人権委員会の報告書が指摘するように、「人道に対する罪」が問われているのです。
橋下氏は、ユダヤ人虐殺まで持ち出して、「慰安婦」制度の残虐性や強制性を否定しようとしていますが、これも成り立ちません。
サンフランシスコ条約で日本が受諾した東京裁判でも、「慰安婦」被害女性を強制的に連行した証拠書類が提出されており、強制と脅迫を認めた陸軍中尉の宣誓陳述書もあります。
なにより「慰安婦」被害女性の証言があり、日本の裁判所も事実認定をしただけでなく、「ナチスの蛮行にも準ずべき重大な人権侵害」(下関判決、1998年)と断罪しています。旧日本軍の兵士による証言も枚挙にいとまがありません。(別項)
これらに共通するのは、被害女性が軍の管理する慰安所に拘束され、1日に数十人もの男性の相手を強制されたという、おぞましい犯罪行為であり、性奴隷そのものの実態です。この事実そのものが世界から糾弾されているのです。
「世界各国の軍隊がやっていた」という橋下氏の言い訳は見苦しいばかりです。現代史や軍隊・戦争論が専門の林博史関東学院大教授が指摘しているように、慰安所設置計画の立案、業者選定・依頼・資金あっせん、女性集め、女性の輸送、慰安所の管理、建物・資材・物資の提供など、「ここまで組織的・系統的に軍の管理下におかれたケースはナチス・ドイツを除くとほかの国ではまずありません」(本紙5月17日付)。
「慰安婦」について、これを「必要なのは誰だってわかる」と言い放った橋下氏の発言こそ「世界への挑戦」なのです。
別項
関釜裁判・山口地裁下関支部判決で認定された事実 (李順徳さんの例)陸軍駐屯地に入れられて四日目に、星が三個ついた軍服を着たミヤザキという年配の将校が小屋に入ってきて、同女に執拗(しつよう)に性交を迫り、これに抵抗できなくなった同女を三日間にわたり毎晩犯した。その後、多くの軍人が小屋の前に行列をつくり、次から次へと同女を強姦(ごうかん)し、昭和二〇年(略)八月の解放の時まで約八年間、毎日朝九時から、平日は八、九人、日曜日は一七、八人の軍人が、小屋の中で同女を強姦し続けた。
元日本兵・河之口真一さんの証言(本紙15日付) いわゆる軍の事務官が、各部隊のところへやってきてサックと性病の予防薬を配って「必ず使ってこいよ」と言うんです。(慰安所の)中には朝鮮や中国の女の人がおって、小屋の後ろにずらっと並ぶんです。前が出てきたら、次が入る。女の人は逃げられませんよ、軍が占拠したところですから。私はいやで行きませんでした。