「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2013年7月17日(水)

参院選の争点

どうする 待機児解消

保育の質の低下招く規制緩和

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 厚労省の統計でも全国で2万5000人(2012年4月)を数える保育所の待機児童。どのように解消を進めるのかが、参院選で鋭く問われています。(鎌塚由美、杉本恒如)


 さいたま市に住む阿部一美さん(34)は、同市が独自基準で運営する保育施設での事故で最愛の娘を亡くすというつらい経験をしています。「保育園にあるべき一番の条件は、子どもが安全に過ごせる環境です」と阿部さんは語ります。

 多くの待機児童を抱える都市部でこの春、巻き起こった運動も、国の「最低基準」が保障された認可保育所の増設を求めるものでした。

 しかし安倍政権の「待機児童解消加速化プラン」(5月)の実態は、株式会社の参入を中心に据えた保育所増設と、基準を緩めたビルの一室などでの定員拡大策です。「第三極」の諸党も「設置基準の緩和、保育士の規制緩和」(みんなの党)、「株式会社の新規参入緩和」(維新の会)など露骨な規制緩和路線を掲げています。

 規制緩和が招くのは保育の質の低下です。

 過去に自公政権と民主党政権が子どもの受け入れ人数の制限を緩和し、「詰め込み」を進めた結果、認可保育所でも死亡事故が増えています。(グラフ)

 阿部さんの長女(当時、1歳7カ月)が事故にあったのは昼寝中でした。子どもが眠る部屋に職員はおらず、寝息や顔色の観察は行われていませんでした。事故の起きた園では、給料が不十分なため掛け持ちのアルバイトをする保育士がいました。

 阿部さんは、保育士の働く環境は子どもの命に直結すると感じています。規制緩和の議論は「子どもを置き去りにしている」と憤ります。

 「保育園はただ預けるところではなく、親と一緒に子どもを育てるパートナーです。規制緩和で質がよくなることはあり得ません」

図

株式会社の保育園

保育士7人 一斉退職

安すぎる給料■給食 からあげ1個だけ■狭い室内 園庭なし

 株式会社が運営している神奈川県内の保育園Aでは、2012年3月に7人の保育士が一斉に退職しました。緑河まりんさん(25歳=仮名)はその一人。「給料が安すぎる。園のやり方についていけない。理由はみんな同じでした」

 正規の保育士は12人しかおらず、6割が退職する事態でした。保護者から不満の声が相次ぎました。「『営利追求の保育園に愛想が尽きた』と保護者にはいえず、みんなで相談して『結婚するから』とうそをいった」と緑河さんは苦笑します。

 緑河さんの月給は手取りで約14万円。賞与は夏と冬に1万数千円ずつしか出ませんでした。

 書類の作成や行事の小物作りが終わらないときは、帰宅後に働きました。「『残業代を出しすぎると本部から文句がくる』と園長にいわれました」

 生活は苦しく、給料日の1週間前に1人暮らしの同僚が「500円しかない」と窮状を訴えるほどでした。

 コスト削減のため給食も粗末でした。からあげなら子どもは1個、保育士は3個だけ。子どもも保育士もおなかをすかせていました。

 緑河さんは社会福祉法人の認可保育園に移り、環境の違いを肌身で感じました。賞与の額が増え残業代も出るため、手取りの給料は年50万〜60万円増えました。

 なにより驚いたのは子どもたちの様子でした。プール付きの園庭で泥にまみれて遊ぶ子どもたちは決して「疲れた」といいません。広い室内を走り回り、集団で遊び、けんかも日常茶飯事。そのぶん「思いやりが育っている」と感じます。

 A園は対照的でした。マンションの2階と3階の狭い部屋で、走ることもできません。保育士にとって子どもは「お客さま」。けがをすれば問題だとされ、おとなしく座らせることに力を注ぎました。

 子どもはおもちゃで個人遊びをするしかありません。「これはぼくのもの」と囲い込むことが流行しました。

 園庭もなく、たまに公園に連れ出すと「疲れた」「帰りたい」を連発しました。

 留守の多い園長と主任を除き、保育士は全員20代と30代前半。相談相手にも恵まれませんでした。

 「何のために働いているのか」。緑河さんは毎日がむなしかったと語ります。

 しかしいまは―。

 「保育は人間の心を育てるもの。自分の一番いい部分をしぼりだして愛情を注ぐもの」。胸を張って誇りを語るベテランに囲まれ、「楽しんでへとへとになっています」。


株式会社参入の問題点 横浜市では…

 安倍晋三首相は、株式会社の参入を推進する「横浜方式」を「全国に広げたい」(5月21日)と表明しています。認可保育所への株式会社参入率は全国平均で2%。25%に上る横浜市では、すでに重大な問題点が明るみに出ています。

 第一に、株式会社は営利を目的とし株主への配当を行うため、人件費などが圧縮される恐れが強いことです。

 保育所が直接配当を行うことには制限がありますが、「本部経費」などの名目で収入を得る親会社は監査の対象になっていません。人件費比率の全国平均は約71%。横浜市内で株式会社が運営するある保育園では約40%になっています。

 第二に、施設が不十分になりがちなことです。

 横浜市は株式会社参入の障壁である施設整備費を抑えるため、賃貸物件で運営する保育所に補助金を出しています。ビルの高層階にまで保育園ができ、園庭がないか狭い保育園も続出しています。

 第三に、経営破綻や撤退のリスクがつきまとうことです。

 横浜市では09年に人材派遣会社が経営する保育所2カ所が経営破綻し、年度途中で認可が廃止されました。その際、運営費の他事業への貸し付け、限度額を超えた弾力運用が発覚しました。


日本共産党の提案

安心・安全の認可保育所 増設を

 日本共産党は安心・安全の認可保育所を大幅に増設することを掲げています。予算のムダを正せば、消費税を増税しなくても年間6000億円を確保でき、毎年10万人分の認可保育所を増やせます。「詰め込み」や営利企業への「丸投げ」には反対です。

 認可保育所の増設にあたっては、▽保育室の面積や職員配置の引き下げを許さず、計画的に改善▽国の責任で市町村の財政負担を軽減▽国有地の活用などで建設用地を確保▽認可保育所に入れない子どもへの緊急措置を実施―します。


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって